2017年4月17日 20:21
15年の歳月を越えて、『光とともに…』新装版が伝える自閉症児と家族の生きる物語
「お願い、"ママ"って呼んで!」願いむなしく、下された診断は…
新装版の1巻目は「誕生・幼児編/保育園編」。光くんが生まれてから保育園を卒業するまでの日々が描かれます。
東京都内のマンションに暮らす、東幸子(さちこ)さん。職場の憧れであった雅人(まさと)さんと結婚し、光くんを出産。喜びと幸せに満ち満ちた東家の日常から物語が始まります。
光くんにはこの頃から抱っこを嫌がる、夜泣きがひどいといった様子が見られていたものの、最初はそこまで気にしていなかった幸子さん。ですが、久しぶりに集まった母親学級の友人たちの子は、我が子とは全く違う落ち着いた様子。
わずかな不安を抱えながらも迎えた一歳半検診。
おもちゃの音にも母親の呼びかけにも反応しない光くんの様子に、保健師さんが一言
「この子、耳聞こえてませんよ」
そんなはずはないと主張する幸子さんに、保健師さんは淡々と病院への紹介状を渡します。
「よかったわね、早く障害が見つかって」
Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)
「光に障害があるなんて…」
きっと何かの間違いだと祈りながら病院に向かった幸子さんを待ち受けていたのは、さらなる衝撃でした。
「自閉症かもしれませんよ」
自閉症は、先天的な脳の機能障害から起こると言われている発達障害の1種ですが、まだはっきりとした原因は解明されていません。
耳ははっきり聞こえている。だけど、他人や物事への興味が独特で、発語やコミュニケーションにも遅れがある。そんな光くんの様子をみて自閉症の可能性を指摘する診察医。
「光は普通の子よ。そのうち"ママ"って言ってくれるわ!」
医師の説明を聞き、渡された資料を読み込んでみても受け止められない幸子さん。
しかし……
「なんとかしろよ自分の子供だろ」仕事一筋で家庭を顧みない夫
「あなたのしつけが悪いのよ!」という姑からの叱責
「光くん、一緒の幼稚園は無理じゃない?」何気ない友人の一言
「誕生・幼児編」の前半では、周囲の理解を得られず孤立する幸子さんの心が克明に描かれます。もちろん、自閉症と言っても、その症状は十人十色で、『光とともに…』の光くんのような症状がすべての自閉症児に現れるわけではありません。また、保護者や周囲の人々の関わりも、家庭環境や地域の資源・文化によって様々でしょう。
ですが、「発達障害かもしれません」と言われた時の、不安と戸惑い、拒絶と楽観の入り混じる親の心境や、自分が直面している現実を他者と分かち合えない孤独感は、似たような経験をしてきた人にとっては強く共感するところでしょうし、そうした経験がない人にとっても、自閉症児の親が抱える痛みを想像には十分すぎるエピソードかもしれません。