ピュアな自閉スペクトラム症、ピュアなADHDは少ない!?意外に多い「重複する発達障害」を紐解く
割合が多いにもかかわらず、理解されにくい発達障害のケースがある
私は精神科医として30年以上、臨床経験の大半を発達障害の診療に費やしてきました。今は、信州大学医学部附属病院にある「子どものこころ診療部」を中心に、乳幼児から成長して大人になった方までたくさんの方たちにお会いしています。ここでは、私の臨床経験から、発達障害と診断された人たちのなかで、割合が多いにもかかわらず十分に理解されずに困っているケースについてお話ししていきたいと思います。
まずは、おさらいとして「発達障害」の種類から紹介しましょう。発達障害には、自閉スペクトラム症や注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害など、いくつかの種類があります。そして、それぞれに特性があります。
たとえば自閉スペクトラム症には「対人関係が苦手」で「こだわりが強い」という特性があり、ADHDには「多動性・衝動性」と「不注意」という特性があります。同じ発達障害でも、種類によって特性は違うわけです。
■発達障害の基本的な特性
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発達障害の各論だけでは説明できないことも
私は、多くの方に発達障害について知っていただきたくて、これまで、自閉スペクトラム症やADHDについての本を多数出版してきました。ちなみに、自閉スペクトラム症やADHDは、「発達障害」を1本の木にたとえれば、その一部なわけです。
しかし、最近、「発達障害の一部」を取り上げるだけでは、発達障害そのものを説明することが難しいし、発達障害を理解していただくのに十分ではない、と考えるようになってきました。そこで、「発達障害」そのものをタイトルにした本『発達障害生きづらさを抱える少数派の「種族」たち』を上梓し、発達障害のなかでも割合が多いにもかかわらず、十分に理解されていない人たちの話をまとめようと思い立ったのです。
みなさんには、こんな経験はないでしょうか?
本やインターネットなどで「発達障害」の解説を読んでも、その内容が自分や自分の子どもにいまひとつ当てはまらず、結局、発達障害のことがよくわからなくなってしまったというケースです。
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ミスが多くて、コミュニケーションが苦手な人
ここで、ある成人女性のケースを紹介しましょう。
彼女は、仕事でミスが多く、職場でいつも苦労していました。本人はよく気をつけているつもりですが、見積書の金額を間違えたり、資料作成時に必要なページを飛ばしてしまったりします。