2019年12月27日 10:00
医療少年院の職員と少年がASDのある人の知覚世界をVR体験――知的障害や発達障害がある少年たちの支援での配慮を考えるワークショップを開催
こういうことを教えてくれる人は今まであまりあったことがないので、すごくうれしかった反面、すごく悔しかったり悲しかったりしました。自分もそうなのですが、周りの音がうるさくてわずらわしいと思ったりしていましたが、自分だけがこんなことになってしまっているわけではないと知って正直うれしかったです。(中略)自分よりももっとひどい状況の中でしっかり対処をさがしてそれを実行している姿を見て、自分もがんばって色々なことをしなければいけないということを教えてもらったと思います」
「ASDを僕も持っているのですが、聴覚が少し鋭くて、他の人が気づかない音が気になったり、そのせいで人の話に集中できないことで悩んでいたけど、僕よりも困っている方がいるんだと知れて、少し気持ちが楽になった。将来、VRのように視覚に信号を入れるのではなく、脳に直接信号を入れたり、脳に入ってくる信号を経験したりする機械というかアイテムみたいなものができればいいなと思ったし、そのようなものを作る仕事をしてみたいと思いました」
感覚の過敏さがない生徒たちは、共同生活する仲間をはじめ、社会の中にはさまざまな感じ方をする人がいるのだということを認識し、どのように配慮すればいいのかを考えるきっかけになったようです。
「自分の感覚とちがうのでいろいろ見て聴いてびっくりしました。(中略)自分でも考えられないような行動をする人たちがどのような気持ちで生活をしているかちょっとは学べたので、そういう人がいたら手助けできるようがんばります」
「ああいう人からしたら、暴走族とか、もっとうるさく聞こえたりすると考えると、少しためらってしまいます」
人はそれぞれ違うということを改めて理解し、自分自身も、周りの人も、それぞれ尊重すべき存在であることに気づく姿もありました。
「(略)一人ひとり一緒ではない。自分にしかない世界を守りたい。
大切にしたい。VRをしてみてパニックになることは悪いことじゃないと思いました。これからもっと理解される世の中になってほしいです」
少年たちそれぞれが抱える生きにくさを改めて整理し、考えるきっかけともなったワークショップでした。
CREST認知ミラーリングプロジェクトを通して、社会の理解を深めていく
今回は、医療少年院という施設で、日々少年たちと向き合う職員の皆さんが、特性への理解を深め、より少年たちに寄り添う指導・支援のきっかけとなるワークショップを行いました。