子育て情報『終わりのない当事者研究、続ける原動力は「苦楽を共にする仲間」ーー研究者・綾屋紗月さんインタビュー・後編【連載】すてきなミドルエイジを目指して』

2020年10月29日 08:15

終わりのない当事者研究、続ける原動力は「苦楽を共にする仲間」ーー研究者・綾屋紗月さんインタビュー・後編【連載】すてきなミドルエイジを目指して

でも、その人の困っていることや考えてきたことなど、内面をわかちあえる関係です。

学生時代も含めたシャバでの人間関係というものは、なんだか虚勢を張り合っていて、なかなか自分の弱さは見せられないようだな、という印象を持っています。でも、今の仲間とのつながりは弱さを公開し、自分の恥ずかしくて情けない話からスタートできる。正直すぎるぐらい正直に話しても大丈夫、という基準が共通しているのは、すごく楽ですね。「ああ、人とつながれて、自分ともつながれた」と思えたのは、本当にこの10年ほどのことです。

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――近い特性を持つ人同士なら、問題なくつながれることもあるんですよね。わたしも発達障害の当事者ですが、サバイブのためにシャバに対応していく必要性や、それによって楽になる部分があるのを理解しつつも、なぜマイノリティだけがそこに力を割かねばならないのだろうと、やるせなさを感じることがあります。

綾屋:それは、本当にそうですよね。
わたしはたまたまマイノリティに囲まれた場所を選べているので、職場ぐらいまでなら自分の話も認められるし、恵まれた環境にいる、助かっているなあと思います。でも、わたしの仲間の多くは、それこそシャバで障害者就労等をして、苦労しているわけで。そこにどうやってわたしたちが貢献していけるのかを考えて、今、組織側をマイノリティに合わせて変えていくためのアプローチもし始めたところです。

――もし、今後の働き方や生き方に悩む発達障害当事者から相談を受けたら、綾屋さんはどんな話をしますか?

綾屋:そうですね……人それぞれですし、難しいですが。先ほど話したような職場環境を変えていくための働きかけには、賛同してくれる企業も少なくはないんです。おそらく、どう対応したらいいか企業側もわかっていないような状況なのだと思います。

そんな中で、長期的に考えたときに勧めたいのは、仲間とつながる場を作っていくことです。世代を超えて縦につながることと、若い人同士で横の仲間とつながることの両方が、早めにできたらいいのではないかと思います。


――仲間とつながることで、何が起こるのでしょうか?

綾屋:当事者研究というやり方にこだわらなくてもいいのですが、自分たちは確かにこうなんだな、ということが、似た身体を持つ人と出会うとわかるようになります。あるあるネタが見つかったり、似た人と集まっても残る違いに気づき、「この部分は障害ではなく、自分のオリジナルなのかな」

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