2022年3月11日 06:15
ダウン症のある友人のために立ち上がったある高校生の話ーー3月19日「バディウォーク東京」開催を前に
これまでのフリードレスデイは「東北大震災支援」や「がん患者支援」「ホームレス支援」といったテーマで、長年ずっと変わらずに開催されてきていて、新しいテーマが提案されること自体が珍しい。
そのうえ企画申請の手順は社会人さながらの難しさで、校長先生へのプレゼンテーション、生徒全体への趣旨説明、ニュースレターの送信など多岐にわたった。単なる思いつきでできることではない。
「それでも成し遂げたい、ダウン症のある友人ナナのために」
エレナはふうっと深呼吸してから、校長先生へのプレゼンテーションをはじめた。
Upload By 黒木 聖吾
ダウン症のある友人ナナ
Upload By 黒木 聖吾
ナナとの出会いは、エレナが7歳、ナナが4歳のときだった。母親同士が友人だったことから、ナナとは小さいころからよく遊ぶ仲良しで、いっしょに旅行にいったり、テニスで遊んだりもした。友人であるナナにダウン症があることは知っていたが、楽しい時間を過ごすのに、ダウン症であることはまったく関係なかった。
だから2014年、エレナが9歳のときに初めてバディウォーク東京に参加したときも、ダウン症に関するイベントだとはまったく思わず、たんに3歳年下の小さな「ナナ」といっしょにウォーキングをする楽しいイベント、ぐらいにしか思っていなかった。お揃いの旗を振って歩いたり、楽しい音楽に合わせて口ずさんだり、風に乗ってたくさんのシャボン玉が飛んでいくのを見て、二人とも楽しくてしかたがなかった。
それから毎年のようにエレナは、渋谷や新宿で開催されたバディウォーク東京に参加した。年齢と共に、これがダウン症の啓発活動で、参加者が街中を歩くことでダウン症の理解につながるのだと分かり、少しずつ意識が変わっていった。
そして2020年、決定的にエレナを変える出来事が起こる。
新型コロナ感染症の流行。
それまで普通に遊んでいたナナと、会えなくなったことに気がついた。学校の同級生とは毎日のようにSNSでやりとりしていたが、リアルなコミュニケーションを主としていたナナとは、コロナの流行を境に会うことがなくなってしまった。
ナナはコロナに罹っていないだろうか?
ニュースでは基礎疾患のある人は重症化しやすいと言っているけど、ダウン症のある子はどうなんだろう?
急にナナが遠い存在になってしまったようで、動揺した。