きょうだいで発達障害?順調だと思っていた2人目育児、1歳半健診で「要観察」に。現実を受け入れられなかった母の後悔
息子が発達ゆっくりのため、娘ももしかしたら…?
娘が産まれる少し前から息子の発達が気になっていた私……娘が産まれてすぐ、まだ産院に入院していた頃から、娘ももしかしたら発達ゆっくりさんではないかと心配していました。
娘は息子と同じく産院ではすごくよく眠る赤ちゃんでしたが、息子と違った点は母乳の飲み方が上手かったこと。私自身も2人目の育児で慣れてきていたのもあるかもしれないのですが、息子のときには感じなかった力強さを感じました。しかし退院してから『抱っこしていないと眠らない、眠ってもすぐ起きる、そして物音に敏感な赤ちゃん』に豹変した息子のことがあったので、「もしかしたら、退院してから娘も豹変するんじゃ……」と不安を抱えていました。
しかしいざ退院してみると、娘は入院中と全く変わらず母乳をよく飲み、よく寝る赤ちゃんでした。全く手がかからなかったので「え、2人目育児ってこんなに楽なもんなのか!?私、母としてのスキル爆上がりしてる!?」なんて勘違いするほどでした。(笑)
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反応が返ってくる!!育児を心の底から楽しめていた時期
生後2ヶ月頃になると、娘はあやすとよく笑うようになりました。息子のときには全くと言っていいほど反応がなかった"いないいないばぁ"にもニコニコ笑ってくれるではありませんか!!「こ……これがもしや……いわゆる定型発達児の反応なのか!?」あやすとすぐに反応を返してくれる娘に「めちゃくちゃ可愛いやんけーーーー!!」と親バカが炸裂し、"娘ももしかしたら……"という心配は吹き飛んでしまいました。
(笑)
息子のときにはしなかった寝返りも5ヶ月頃には自らしていて、それからもハイハイやつかまり立ち、離乳食の手づかみ食べやスプーン食べもすんなりと進み、10ヶ月頃には単語や指差しも出てきました。育児書に書いてある目安どおりの順調な発達に「娘は定型発達に間違いない!!」と思い込むようになりました。
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順調に思えた発達。落ち着きのなさが気になり1歳半健診で相談するも…
1歳1ヶ月頃になると、娘はひとり歩きができるようになりました。しかしこの頃、娘の成長を喜ぶ反面、少し気になることも出てきていました。腰がすわった頃から横抱きよりも縦抱きを好んでいた娘ですが、ハイハイができるようになった頃から、娘は抱っこされること自体を嫌がるようになっていたのです。
ひとり歩きが安定してくるようになると、さらに落ち着きのなさが目立ち始めたので、1歳半健診で保健師さんに一応相談してみることにしました。健診をひと通り終え、落ち着きのなさ以外には特段困っていることもなく、発達の遅れも見られなかったので、保健師さんからは「様子を見ましょう」と言われました。保健師さんのその一言に「落ち着きはないけれど、診断されるほどじゃないのかもしれない」と少し安堵しました。
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様子見と言われながらも、兄と比べて意思疎通ができていたため、発達の凸凹を受け入れたくなかった入園までの日々…
1歳半健診後、定期的に保健センターの保健師さんから、娘の発達についての確認の電話がありました。その頃の娘はというと、2語文がなかなか出ずに少し心配していたものの、2歳を過ぎた頃から爆発的に言葉が出てきたこと、そしてASDの息子と比べて意思疎通も容易だったため、様子見のまま発達相談はせずにいました。
正直なところ、息子にASDの診断が出たばかりだったので「息子だけじゃなく、兄妹2人とも発達障害だとしたら……娘にも診断が出るのは耐えられない」と受け入れ難い気持ちばかりが大きくなっていました。しかし、このまま幼稚園に入園して「きっと大丈夫だろう」と思う反面、「もしも集団生活についていけなかったら……」という気持ちは常に頭の隅にありました。
娘が2歳半を過ぎた頃にまた保健師さんより連絡があり、発達教室のお誘いがありました。最初は断ろうと思いましたが、「一応通っておこう」と考えなおし、発達教室に参加することにしました。
発達教室での娘は、落ち着きのない一面はありつつも、保健師さんの話を聞いてちゃんと動けているように感じました。「落ち着きはないけれど、このまま幼稚園にも行けそう……行けてほしい!」揺らぐ気持ちは変わらないまま、娘が定型発達であってほしい思いだけが強くなっていきました。
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体験入園で園長先生から言われた言葉。娘への後悔…
発達教室が終わり、保健師さんに発達検査(新版K式発達検査)をしてもらうことになりました。検査の結果は"年齢相応の発達指数"でしたが、保健師さんから「1対1で行う検査ではこの数値だけど、娘ちゃんには意識が逸れやすいところがあるから、集団生活だと娘ちゃんの持ってる力を発揮しづらいかもしれない」と言われました。それでもなお、私の中では、娘は定型発達であると信じたい気持ちが先行し、保健師さんの言葉を素直に受け入れることができませんでした。
そんな矢先、娘の入園予定の幼稚園で、満2歳児向けの体験入園が始まりました。「何事もなく過ごしてほしい……」と祈るような気持ちで娘を体験入園させましたが、そんな私の思いとは裏腹に、娘は先生のお話中に教室を出て行ってしまったり、絵本の時間におままごとのおもちゃで遊び出したり……明らかに集団行動が苦手な様子でした。
そんな娘の様子を見ていた園長先生から「海乃さん、息子さんのことでよく知ってると思うから言わせてもらうんだけどね(息子もその幼稚園に転入予定であったため、園長先生には事前に息子がASDであることを伝えていました)、娘ちゃんはどうかな?療育を受けたほうが今後の娘ちゃんのためにもなると思う」とすすめられました。
園長先生からの言葉に、今までわが子2人に診断が出てしまうことが受け入れられなくて、娘の発達に期待を寄せ過ぎ、娘の発達凸凹な部分を見て見ぬふりをしてきてしまった自分を悔やみました。
その体験入園の日の帰り道、泣きながら保健センターの保健師さんに電話し、児童精神科への紹介状を書いてもらいました。
医師による診察の結果、娘は神経発達症(ADHDと軽度の自閉スペクトラム症)と診断されました。幼稚園入園前の3歳9ヶ月のことでした。
現在、娘は幼稚園に通いながら、週1日療育園に並行通園しています。何にでも興味があり積極的に楽しむ娘は、幼稚園も療育園も、どちらも「行くー!!」と全力で楽しんでいます。
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執筆/海乃けだま
(監修:鈴木先生より)
一般的に乳幼児健診などで保健師さんが「様子を見ましょう」という場合は、経過観察のみとなることが多いため、お子さんの発達に気になる点があれば、できるだけ早期にかかりつけ医に相談するのがお勧めです。病名告知は医師にしかできません。「わが子は定型発達で、障がいがあってほしくない」と思うのは、親御さんの自然な感情だと思います。それでも、お子さんの発達の特性がなくなるわけではありません。
今回のケースのように悩んだ末、集団の中に入ってから他児との違いに気づき、専門医を訪れる親御さんもいます。
今回、娘さんは3歳で神経発達症の診断がつきましたが、早いほうです。お子さんの発達のつまずきに悩み続けている親御さんが就学前に専門機関へ繋がれるようにするため、5歳児健診が少しずつ全国に広まりつつあります。できるだけ早期に診断して受容し、将来に向けて家族や保健師・教員・かかりつけ医等と一緒に考えて歩んでいくことが、お子さんのためには重要なのです。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如・多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。