子どもの感性を育む「歌と五感」――幼い子どもの成長につながる歌ってどんな歌?
と呼ばれる話し方で話すと、子どももそれに応えて声を発しますが、じつはその声の波形やリズムは親のそれらとまったく同じなのです。その時点で、親子の音楽的なやり取りははじまっていると言っていいでしょう。それはコミュニケーションというより、「情動の交流」と呼ぶべきものです。
子どもが明確に歌と呼べるものを歌うようになるのは1歳頃からですが、それ以前にも赤ちゃんはリズミカルに歌っています。そうして親と「歌」を交わすことで、子どもは親とのつながり、親と通い合っていることを無意識のうちにも感じるのです。
それから、親など周囲の大人が子どもと一緒にたくさん歌ってあげるべきもうひとつの理由は、歌が人間的成長に欠かせないものだからです。誰かと一緒に歌を歌う際に重要なのは、呼吸を合わせることですよね。そして、人が呼吸を合わせることが求められるのは歌うときだけではありません。
会話のなかでどう相づちを打つかといったことも、人と呼吸を合わせることのひとつでしょう。
人は必ず社会のなかで生きていくもの。だからこそ、人との関わりのなかで、「自分が社会の一員なんだ」と感じることは、子どもの成長に絶対に欠かせないものです。人と呼吸を合わせることが求められる歌というものは、そういう社会性を育むことに大きな役割を果たすものだとわたしは考えています。
また、親が子どもと一緒に歌えるということは、親子関係がいい状態にあるというサインでもあります。怒ったりイライラしたりしているときには大人は歌いませんよね。歌を歌うということは親がリラックスしていることの証なのです。子どもが健やかに育つためにも、親がそういう心の余裕を持てるような家庭、社会であってほしいですね。
歌だけではなく五感が総合的に子どもの感性を育む
では、どういう歌が子どもの成長につながるのでしょうか。幼い子どもの場合、子どもの認知能力や発達ときちんと合っているものである必要があります。簡単に言えば、子どもが「表現できる歌」であるべきでしょう。日本には「わらべ歌」という、子ども自身がつくって歌い継がれてきた歌があります。それらの多くは、日本語のリズムや抑揚に合わせてつくられた音域が狭いもの。子どもにも無理なく発声できて、話しはじめたばかりの子どもでも、しゃべることの延長のような感じで歌えます。
幼稚園や保育所の年少さんくらいの子どもの場合だと、有名なところでは『ちょちちょちあわわ』『東京都日本橋』など、赤ちゃんでも一緒にできる手遊び歌がいいでしょう。