“歴史好きな子” を育てるには? 読書のお供に「地図と年表」を、調べ学習のきっかけに「映画や本」を。
過去と出会う、というパターンの作品群が数多くあります。『アリエッティ』の原作を書いたメアリー・ノートンも、魔法のベッドに乗って過去に飛ぶお話を書いています。
そして現在、日本で古典的な児童向け小説としてまだ手に取られているものには、この時期に書かれたものが多いのです。
マーニーの映画や原作が好きなようでしたら、ぜひ、こうした「お屋敷の不思議」系の物語にも足を踏み入れて欲しいと思います。いくつか著名なものをご紹介しましょう。もしかしたら子供の頃に読んだことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。
︎古いお屋敷で、昔の時代の女の子と友達になる『トムは真夜中の庭で』
︎親戚の家を訪ねて行った折に、エリザベス一世の時代へタイムトリップする『時の旅人』
︎ひいおばあさんのお屋敷で、過去に生きた子供達と触れ合う『グリーン・ノウの子どもたち』
「過去に出会う物語」で歴史を体験として理解しよう
こうした作品が生まれた背景には、2度の世界大戦を経て国が変わってしまった、というイギリス国内の事情があるのでしょう。
自分の国が変わり果ててしまった時、「新しいイギリス」しか知らない子供たちに、過去を知ってもらいたいという気持ちが、これらの物語の中には流れています。
同時にこうした物語群が、イギリスの子供たちにとって、歴史を身近なものにしてきたのも事実です。学校で座って暗記する歴史ではなく、歴史を生きている人たちの体験として理解するための鍵を、こうした物語は握っています。
歴史とは単に暗記すれば済む年号でも人名でもなく、実際に生きた人々の感情や事情をはらんでいるのだという感覚が、こうした「時を超える」物語には共通しています。
もともとは、イギリスという一つの国の特定の歴史条件から生まれた作品群ですが、期せずして、日本の子供達がイギリス史に興味を持つきっかけになりそうな作品群が生まれた、とも言えるでしょう。
世界の歴史が楽しく学べる児童書はこれ!
タイムスリップは、子供たちをワクワクする冒険に連れて行きながら、歴史についてゆるやかに手ほどきをするためには、良い物語の仕掛けです。
近年の作品で、意識的に子供たちへの歴史の手ほどきをしようとしているのが、2012年に日本で映画化もされた、メアリー・ポープ・オズボーンの『マジック・ツリーハウス』シリーズでしょう。
アメリカの作者によって書かれたこのシリーズは、子供を世界各国の様々な時代へ連れて行きたい、という意識で書かれているように見えます。