「心の脳」に直接働きかける読み聞かせ。語彙を豊かにし、学力向上につながる読み方とは
イギリスで行われた研究では、1冊の絵本を何度も読み聞かせたグループと、複数の絵本を読み聞かせたグループで覚えた単語数を比較したところ、前者が後者の2倍も多く覚えたのだそうです。
一方で、「ただ読むだけでは、理想的な語彙力や文章理解力はつきません」と、教育環境設定コンサルタントの松永暢史さんは言います。松永さんが効果的な読み聞かせ方として推奨しているのは、絵本に書かれた一字一字のすべてをハッキリ発音する、「一音一音ハッキリ読み」です。
街中で移動販売車から聞こえてくる、「いしや〜きいも〜」「たけや〜さおだけ〜」などの呼びかけをイメージするとわかりやすいかもしれません。一音一音切って、下記のように母音を正しく発音し、口を大きく動かして読み聞かせます。
「あ」→最大限に口を開く発音。自分の口にゲンコツを入れるイメージで広げ、腹の底から音を出す
「い」→「あ」の状態から左右を思いっきり口を引き裂くイメージで。
「う」→口を前にとがらせて、しっかり止める。
「え」→唇を少しかたくして、口をやや縦に開いて発音する。
「お」→口を結びかけて下あごを下げ、口の中に空洞を作る。
(引用元:EhonNavi|『将来の学力は10歳までの読書量で決まる!』松永暢史さんインタビュー)
この読み聞かせ方をするときは、子どもにわかりやすいように言い換えたり、抑揚をつけたりする必要はありません。子どもの耳から体内へ注入させるようなイメージで、ゆっくり淡々と読み聞かせるのがポイントです。なお、集中力のない子や、じっとしていられない子に読み聞かせるときは、親子で一緒に寝転がって読むとうまくいくかもしれません。
松永さんによれば、この読み聞かせ方を実践した親御さんから、「今まで、じっと聞いていられなかった子どもが、じっと聞いている」という報告があったそうです。読み手がしっかりと言葉を発することで、聞き手もしっかりとその音を聞き、言葉のひとつひとつを理解しようとするのでしょう。
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絵本の読み聞かせのコツについては、あらゆる媒体で様々な情報が公開されています。
大切なのは、読み手である親御さんがいろいろ試してみて、一番楽しく読み聞かせることができるやり方を知ることです。
読み手が楽しめなければ、聞き手も楽しめませんし、長続きしません。親子で一緒に楽しむことが、絵本の読み聞かせの最大のコツといえるのではないでしょうか。