いちばんのしつけとは、子どもに〇〇を見せること。親はそんなに頑張らなくていい!
その方向性を考えるうえでのアドバイスとしては、固有名詞を使うなどあまり具体性を出さないようにすること。「東大に行くような人間に育ってほしい」「最低でも偏差値60以上の大学に行く人間に育ってほしい」といいはじめては、それこそ夫婦の意見はなかなか一致しません。
そして、むしろ夫婦の意見に「幅」があることのほうが、子どもにとっては大切なことだとわたしは考えます。というのも、その幅のなかで子どもの個性が育っていくからです。実際にはあり得ませんが、仮に夫婦のあらゆる意見が一致しているという場合、子どもはその狭い価値観のなかでしか生きられないということになります。
でも、夫婦の意見に幅があるほど、子どもは「このことに関しては、お父さんはこういうけど、僕の意見はお母さん寄りだな」といったふうに考えることができます。あるいは、人にはそれぞれ異なる価値観と意見があるということを知ることもできる。夫婦の意見の幅が子どもの視野を広げ、世の中の見方をつくっていくのです。
そう考え、仮にシングルの人であっても、子どもの祖父母など自分以外の大人と接する機会をなるべく増やしてあげることが大切なのではないでしょうか。
『大学入試改革後の中学受験』
おおたとしまさ 著/祥伝社(2019)
■ 教育ジャーナリスト・おおたとしまささん インタビュー一覧
第1回:いちばんのしつけとは、子どもに〇〇を見せること。親はそんなに頑張らなくていい!
第2回:いまの時代、「絵本の読み聞かせ」にこだわらなくてもいいんです。(※近日公開)
第3回:才能さがしのための「たくさんの習い事」より、もっと大事にすべきこと(※近日公開)
第4回:なんでも「自分で決めさせる」親が、子どもを追い詰めているかもしれない理由(※近日公開)
■ おおたとしまささん 過去のインタビュー記事はこちら
過当競争極まれり。難関中学への“逆転入学”が子どもに弊害をもたらしている
「間に合わせの学力」では人生厳しい。「本質的な学力」を伸ばす“1日10分”の学び
学力は人並程度あればいい。「新たな時代」を生き抜くためには“3つの力”が必要だ
「教育虐待」のやっかいな実態。今の子どもには“決定的に足りない”時間がある
教育虐待をする親とその学歴。その教育、本当に子どものためですか?
教育虐待は教育という大義名分のもとで行う人権侵害。
でも親の多くは無自覚である
失敗経験から学ぶ、学力とは異なる力がものをいう時代。