コミュニケーション能力が高い子どもは、家族との会話が多かった! その理由は――
今どきの子どもたちのコミュニケーション能力低下は、学校や新卒採用などの現場において、ずいぶん前から言われ続けてきました。また、学校生活から卒業して社会人になれば、さらに高度で複雑なコミュニケーションに対応できる力が求められるでしょう。
将来、社会人生活を送るのに十分なコミュニケーション能力を育むためには、日頃の家庭でのコミュニケーションの在り方が大きく影響します。
子どものコミュニケーション能力がなぜ低いと言われるのか、そして家庭でコミュニケーション能力を育てるために親ができることについて紹介します。
子どものコミュニケーション環境は、今と昔で大きく変わっている
子どものコミュニケーション能力が低くなったと言われる背景には、社会の大きな変化があります。
たとえば、翌日使う持ち物を確認し忘れていたことを気づいたとき、子どもたちはどうするでしょうか。かつては友だちの自宅へ電話をかけ、応答した家の人に友だちへの取次ぎをお願いし、代わって出た本人に確認をしていましたが、今ではメールアプリなどでダイレクトに、しかも声を発することなく確認することができます。
また、わからないことがあれば、親や先生に聞くよりも、先にネットで検索して調べたほうがより早く、そして多くの情報を得ることができる、と考える子も少なくないでしょう。
もうひとつ、普段の家庭での過ごし方をイメージしてみましょう。学校や園から帰ってきた子どもたちが、友だち同士、近所で集まって遊ぶ姿を見ることは少なくなりました。そもそも子どもの数が少なくなっているうえに、習い事でお互いに遊ぶ時間を合わせにくい現状があります。
夕食時には、同居するおじいちゃんおばあちゃんも含め大人数で食卓を囲んで、その日あったことを話し、いろんな世代の意見を交えながら団らんする――そんなシーンも、昭和を描いたドラマやアニメでしか見かけなくなりました。
ITの発達と少子核家族化が、子どもを取り巻くコミュニケーション環境を変えたと言えるかもしれません。
言葉が足りないことが原因でトラブルに
社会の変化に合わせるように、今どきの子どもたちは、小さなコミュニティの中で仲間内や家族とやりとりする比重が大きくなっています。そして学校生活では、単語レベルでの短い言葉のやりとりが、クラスメートとの意思疎通を不十分にさせてしまい、そこからトラブルになってしまうことも。
教育ジャーナリストの斎藤剛史氏は、現代の子どもたちのコミュニケーション能力について、「良好な対人関係をつくる能力が低下している」という “否定的な見方” がある一方で、「周囲の人間関係を的確に把握して、それに自分を合わせるなど高い能力がある」という “肯定的な見方” もあるとしています。
しかし、全体的なコミュニケーション能力はやはり低くなっているようです。
ただ、今時の子どもたちには、仲間同士では必要以上に気を使うのに対して、大人など異世代や仲間以外に対する人間関係には無関心という傾向もあるように思われます。いずれにしても、昔に比べれば、全体的なコミュニケーション能力は低くなったと言っても過言ではないでしょう。
(引用元:ベネッセ教育情報|就職も左右!?「コミュニケーション能力」は家庭から)
「やばい」「うざい」「きもい」などの無思慮な短い言葉でやりとりを許し合える身近な関係から一歩外へ出た途端、お互いの言葉が足りないことで、子どもたちの間にトラブルが生じていると考えられます。
コミュニケーション能力は就職までも左右する
学校生活でのトラブルだけでなく、社会人生活、とりわけその第一歩となる就職にもコミュニケーション能力は大きく影響を及ぼします。
全国大学生活協同組合連合会(全国大学生協連)が2009(平成21)年秋に実施した「学生生活実態調査」によると、以下の特徴がある学生ほど、就職内定率が高いことがわかりました。
- 目上の人との会話が得意
- 家族との会話が多い
- 友人の数が多い
- リーダー経験がある
- 周囲の意見を尊重できる
幅広い人間関係を形成して、自分から積極的に働きかけ、周囲に共感できること、つまりコミュニケーション能力の高さは、就職活動の結果までも左右するわけです。
また、『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書』の著者であり、現役東大生の西岡壱誠氏は、「友だちが多いヤツが東大に合格する」と話しており、“勉強に限らずさまざまな面で活躍している、成長スピードの速い人”の 共通点として、以下のことを挙げています。
どんなに意見が違う人の話でも、話を遮るのではなく「いったんは聞いてみよう」という姿勢を持っている。そして、そのなかからなにかを得ようとしているように思います。
(引用元:Study Hacker|現役東大生が「友だちが多いヤツが東大に合格する」と言う根拠。やっぱり “性格がいい人” が伸びていく)
これは前述した「周囲の意見を尊重できる」という性格に当てはまるのではないでしょうか。どうやら、コミュニケーション能力は「学び」にも影響を与えるのですね。
家庭でできるコミュニケーション能力アップ術
子どもたちの将来を考えるうえで必要不可欠なコミュニケーション能力は、家庭でも意識することで向上できます。次に紹介するコミュニケーション能力アップ術でピンときたものがあれば、ご自身のお子さまに合わせて取り入れてみてはいかがでしょうか。
■子どもの話を最後まで聞く
帝京短期大学・生活科学科学科長である宍戸洲美教授は、子どもの話に「しっかり心を向ける」ことが大切だと言っています。
まずは、「子どもの話を最後まで聞く」「スマートフォンを見ながら返事をしない」、この2つを心がけてみてはいかがでしょう。話を聞いてもらった経験が多い子どもだけが、話を聞ける子どもになるのです。また、親に話を聞いてもらうと、「お父さんお母さんは私を見ていてくれている、わかってくれている」と感じ、子どもの自己肯定感が高まります。
■長い文章で話す
「あれとって」「早くして」――親の私たちも、簡単な言葉で話しかけていることが多いのではないでしょうか。「次世代教育のグランドデザイン」を描く研究機関、内田洋行教育総合研究所が配信する「学びの場.com」は、親子間での会話こそ気をつけるべきだとしています。「リビングのテーブルに置いてあるレシピ本を取って」「〇時に家を出ないと用事に間に合わないから、それまでに出かけられるように準備しよう」など、親子で長い文章をやりとりしてみましょう。■学校や習い事以外の場所に出かける
地域の行事や、公園や駅前で開催されるイベントなど、さまざまな人と触れ合える場に出かけてみましょう。その際、子どもだけにコミュニケーションを促すのではなく、親の私たちが積極的に声をかけてコミュニケ―ションを図るようにします。
教育ジャーナリストの中曽根陽子氏も、「さまざまな価値観への理解とコミュニケーション力は、経験からしか学べない」と言っています。家庭や学校・習い事以外の場所にどんどん子どもを連れ出しましょう!
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子どものコミュニケーション能力は、現代の社会の仕組みを見ても、自然に任せていてはなかなか伸びないようです。とはいえ、親が何でも先取りしてヒントを出したり代弁したりするのは禁物。じっくり焦らず見守っていきましょう。
(参考)
文部科学省|コミュニケーション教育推進会議(第1回)「コミュニケーション能力」に関する指摘・調査等
内閣府|情報誌「子どもと若者」~子どもと若者への支援に向けて~コミュニケーション力を高めるために
ベネッセ教育情報|就職も左右!?「コミュニケーション能力」は家庭から
Study Hacker|現役東大生が「友だちが多いヤツが東大に合格する」と言う根拠。やっぱり “性格がいい人” が伸びていく
学びの場.com|子どものコミュニケーション力は落ちているのか
Study Hackerこどもまなび☆ラボ|自己肯定感を育む、親子コミュニケーション。「聞いて!」「あとでね」の正解
Study Hackerこどもまなび☆ラボ|学校と習い事以外の世界はありますか?「生きる力」を育てる “第3の居場所”