イヤイヤ期に「悩まない、苦しまない」。子育ては“ほどほど”がちょうどいい
その繰り返しのなかで、子どもは「自分が困ったときには、お父さんやお母さんは一生懸命に手を尽くしてくれる」と感じていくことができる。そのことが、その後の親子関係を良好なものにするために大いな力を発揮するでしょう。親の思いは、きっと子どもに通じるのです。
そして、お母さんたちにはぜひ、「ほどほどのお母さん」となることを心がけてほしいですね。「ほどほどのお母さん」とは、イギリスの精神科医であるドナルド・ウィニコットが提唱した「good enough mother」の訳です。いまのお母さんたちは、本当によく頑張っています。
だからでもあるのですが、「イヤイヤ期の子どもにはこう対処すべき」「これからの社会を子どもが生きるには非認知能力が必要だ」「あれも必要、これも必要」「もっといい家庭教育の方法があるのではないか」「この子のすべてがわたしの肩にかかっている」というふうに考え悩んでしまうのですよね。ついつい「完璧なお母さん」を目指しているわけです。
でも、それでは苦しくなって当然です。
また、「機嫌がいいことが多かったお母さんに育てられた子どものほうが、機嫌よく幸せに育つ」というフィンランドの研究もあります。このことに関しては、研究結果など関係なく誰もが想像できることでしょう。でも、あまりに完璧なお母さんを目指して苦しんでいると、いつも機嫌がいいというわけにはいきません。ですから、あまり子育てに対して前のめりにならず、「わたしは十分に頑張っている」「これくらいでいいか」といった気持ちを持ちながら、「ほどほどのお母さん」でいるくらいでいいのです。いまでも、十分によく頑張っていると思いますよ。
■ 玉川大学教育学部教授・大豆生田啓友先生 インタビュー一覧
第1回:非認知能力は育っているか?子どもが「目をキラキラさせる世界」があれば安心です
第2回:かわいい子には“いたずら”をさせよ!?「自由に遊んでいいよ」で子どもは学ぶ
第3回:親が先回りしたら「自己決定力」は育たない。幼くても決断力を伸ばせる声かけのコツ
第4回:イヤイヤ期に「悩まない、苦しまない」。
子育ては“ほどほど”がちょうどいい
『非認知能力を育てるあそびのレシピ 0歳〜5歳児のあと伸びする力を高める』
大豆生田啓友・大豆生田千夏 著/講談社(2019)
【プロフィール】
大豆生田啓友(おおまめうだ・ひろとも)
玉川大学教育学部教授。