「すごい」「えらい」より効果的! 褒めず・怒らずに子どもを自立させるアドラー式子育てとは
アドラー式子育てでは、「勇気づけ」という技法を使います。勇気とは「困難を克服する力」のこと。勇気づけとは、子どもの気持ちに寄り添い、共感する態度で接することで、子どもに「困難を克服する力」を与えることを指します。
たとえば、子どもが何かしてくれたとき、「えらいね」「すごいね」と褒めるのではなく、「ありがとう」「うれしいな」などの気持ちを伝えるようにするーーこれが勇気づけです。「ありがとう」「うれしいな」などの気持ちを受け取った子どもは気分が良くなり、「自分の意思で」相手を喜ばせるような行動をとるようになります。ポイントは、この「自分の意思」という点。勇気づけは、子どもに自信を与え、「自らやってみよう」というやる気を引き出してくれるのです。
こうした例を見て、「褒めたらダメなの?」と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。
もちろん、子どもを褒めることがいけないわけではありません。しかし、ちょっとしたことでも褒めてばかりいると、子どもにとって逆効果です。
公認心理師・産業カウンセラーの大美賀直子氏によると、子どもを些細なことで頻繁に褒めていると「褒められる状況」が当たり前になってしまい、褒められない状況に不安を覚えるようになるのだとか。そうすると、進学や習い事、就職などで「褒めてもらえない環境」に属したとき、適応できなくなってしまいます。また、「自分がどうしたいか」ではなく、「大人はどう思うか」を基準に行動するようになり、「自分の意思で」行動する力が身につかなくなってしまうことも。
また、子どもに感情的に怒ったり、嫌味を言ったりすることも逆効果です。たとえば、子どもが部屋の片付けをしないとき、「片付けなさいって言ったじゃない!なんでできないの?」と怒鳴ったり、怒りながら親御さん自身が片付け始めたりするのは、アドラー式子育てでは、「勇気くじき」と呼ばれている行動。子どものやる気を失わせ、学ぶ機会を奪ってしまいます。
10歳になるまでに実践しよう
ここまでの内容を読んで、「これまで毎日のように怒ってしまっていた……」「勇気づけなんて全くしてこなかったから手遅れなのでは……」と不安に思った方もいらっしゃるかもしれません。
アドラー式子育てでは、子どもの人格や性格は10歳頃までに形成されると考えられています。そのため、10歳前後の関わり方が特に重要視されているのです。