よく噛む子どもは「勉強も運動もできて、ストレスのない子」に育つ! 数々の研究が証明
これらをまとめて考えると、噛むことが「前頭前野や海馬ほか、あらゆる脳の領域」を活発に働かせ、「頭の回転の速さや、記憶力」などに影響すること――つまりは「よく噛むことが、学力アップにつながる」と確信できるのではないでしょうか。
3.「よく噛むこと」と「ストレス」のいい関係
しかも、よく噛むことは、子どもの気分だって変えてくれます。
「咀嚼と脳の研究所」前所長の小野塚實氏は、セロトニンという神経伝達物質が脳内に増えると、緊張感がほぐれ、ストレスがやわらぐと説きます。
では、どうしたらセロトニンが増えるかと言えば、もうわかりますね。よく噛むことです。東邦大学名誉教授で、セロトニン研究の第一人者でもある有田秀穂氏が2009年に、週刊日本医事新報で発表した論文によれば、セロトニン神経は呼吸や歩行といったリズム運動のほか、同じリズム運動の「咀嚼」によっても活性化されるのだとか。
研究では、咀嚼のリズム運動として被験者にガムを噛んでもらい観察したところ、ガムを20分間しっかりと噛み続けると、血液の中にセロトニンが増えていったそうです。その際に行なった心理テストでも、緊張・不安などのネガティブな気分が改善されていたとのこと。
噛むことは、体にも脳にも、そして心にも効くわけです。
4.「よく噛むこと」と「運動」のいい関係
それに、よく噛めば運動能力だって向上するんです。
東京歯科大学特任教授の石上惠一氏によれば、ガムを噛んだあとに膝を曲げたり伸ばしたりの運動をすると、ガムを噛まなかったときに比べて9%近く「膝関節」の筋力がアップしていたそうです。また、同氏らが10代~50代からなる100人の握力や背筋力を調べたところ、ガムを噛む前よりも、ガムを噛んだときのほうが筋力アップしていたとのこと。
運動には平衡性(バランスの力)も大切ですが、石上氏は、ガムを噛まないときよりも、噛んだときのほうが、バランスの安定性があると示されたデータも学会で提示しています。子どもに着目した研究もあります。静岡県立大学短期大学部講師(現・大手前短期大学歯科衛生学科教授)の木林美由紀氏が2011年に発表した研究では、小学校6年生の児童171名に、食事のアンケートを実施。その後、「噛む力」と「運動能力」を測定したところ、食べることへの関心が強く、野菜を多く食べる子どもは「噛む力」が強く、「運動能力」