「絵本の読み聞かせ」から、子どもが学ぶもの。そして、親が手に入れるもの。
肌を触れ合わせて「親子の絆」を深める
その他、絵本の読み聞かせの大きなメリットとしては、「親子の絆を深める」ということも挙げられます。
絵本を読むときは、たとえば子どもを膝のうえに乗せたり、寝っ転がりながら肩が触れていたりと、親子で肌と肌を触れ合わせていますよね。すると、オキシトシンというホルモンが、親子ともに脳から分泌されるのだそうです。
このオキシトシンは、「愛情伝達物質」とか「愛情ホルモン」という呼び名で知られ、思いやりや愛情といった心の機能を健やかに発育させるために欠かせないもの。そして、その働きによって、親子は信頼関係を心のいちばん深いところで結んでいく、つまり親子の絆を強めることができるのです。
わたしは、講演活動を通じてたくさんのお母さんたちから絵本にまつわる体験談を耳にしますが、実際、「絵本の読み聞かせをしたことで子どもの態度が変わった」という話を頻繁に耳にします。たとえば、絵本の読み聞かせをする前は、公園で遊んでいて「もう帰るよ」といってもなかなか遊びをやめずに駄々をこねていたような子どもも、絵本の読み聞かせをはじめてからは素直に従ってくれるようになったという話もあります。それだけ親子の絆が深まり、強い信頼関係が築けたということなのではないでしょうか。
絵本の読み聞かせが、肉体的な疲労を取ってくれる!
加えていうなら、愛情ホルモンであるオキシトシンには、なんと「肉体的な疲れを取る」という働きもあるようです。寝る前に、肌と肌を触れ合いいとおしい気持ちで読み聞かせを実践した多くのお母さんが、翌日自分の疲れまで取れたという体験談を話されています。
共働き家庭が増えているいまは、働きながらもこれまでの専業主婦と変わらず子育ての中心を担っているお母さんが増加中です。そういうお母さんには、まさに24時間、気が休まる時間がほとんどないといっていいでしょう。
そうすると、「絵本の読み聞かせは子どもにとっていいことだ」「絵本の読み聞かせをしてあげたい」と思っていても、仕事から帰って夕食の支度をして、子どもをお風呂に入れて、寝かしつけるので精いっぱい。つい、「今日は絵本の読み聞かせはしなくていいや」と思ってしまうものです。
でも、そういう忙しいお母さんたちにこそ、ぜひ絵本の読み聞かせを積極的にしてほしいと思います。そもそも、絵本の読み聞かせによって分泌されるオキシトシンに肉体的な疲れを取るという多くの体験談があることもそうですし、先にお伝えしたように、絵本の読み聞かせで親子の信頼関係が深まれば、子どもが駄々をこねて困らされるようなことも減るのですから、それだけ日常生活のなかでたまる疲労も減ることになるのです。