自分の「ウッカリ」で息子に悲しい思いをさせてしまったときに、わたしが息子に話したこと。
ある日、もうすぐ4歳になる息子がしょんぼりしていました。
「せいんせいがね、お母さんのこと、忘れものが多いねって。また忘れちゃったね、いつもなんでも忘れるねって。ぼくはさあ、困っちゃったんだよ…」
「ついに、きたか」と思いました。こういう理由で息子が傷つく日がくると、ハッキリ覚悟していたわけではありませんが、なんとなく予想はしていました。
前回記事:ウッカリ者のわたしが、子育てをするうえで気をつけていること。
思っていた以上にショックで、息子から話を聞いた日はずっと頭の隅っこがグルグルしていました。怒りの矛先は間違いなく自分だけれど、自分のことを棚に上げて息子にそんなことを言った先生にも腹が立ってしまう。
とはいえ悪いのは、どう考えてもわたしです。先生だって「このお母さんはウッカリさんだ」と分かっていても、度が過ぎてイヤになっちゃうんだろうな。そりゃそうだ。先生がぼやきたくなるのも分かります。
そこで、わたしは考えました。ぱっと頭に浮かんだのは以下の3つです。
1. 先生に息子がしょんぼりしている事実だけを伝える。
2. 先生に普段からわたしが迷惑をかけていることを謝りつつ、息子がしょんぼりしている事実も伝える。
3. 息子がしょんぼりしていること、それを見てわたしも、自責と反省と怒りと悲しさでどうしたらいいのか悩んでいることを、ありのまま伝える。
理由はこれから同じことが何度も起きるからです。いまの時点だけを考えれば、先生に気持ちを伝えれば何かいい方向に対処できる可能性もある。先生だって育児のプロとして、自分の発したことばが息子をしょんぼりさせていることを省みるかもしれません。
もちろん、わたしは忘れものをしないように日々の生活を見直す必要があります。失敗するメカニズムを見つけて対処しなければなりません。いくら苦手な分野だからといって、対処無しに開き直るのなんてもってのほか。
とはいえ人生は長いのです。これから先も、息子がわたしの子どもである限り同じことは繰り返しあるはず。そのたびにしょんぼりして、わたしは息子がしょんぼりしないように道を優しく整備して…キリがありません。
それってまるで、「弱者なんです!だから優しく扱ってください!」って叫びながら道を歩くようもの。そんな親子になりたいかな。絶対になりたくない。そもそも、弱者だとは思っていません。
社会の対応も他人の目も、自分に都合よく変わることはない。
息子には大変申し訳ないけれど、不甲斐ないなと思うけれど、本人がこの母親に慣れるしかない。うたれ強くなるしかない。すべてのものには良い面と悪い面があって、それを両方見守れるようになってほしい。ウッカリ者の母でごめんよ息子。でも、どうか強く生きてほしい。
息子がしょんぼりして帰宅した次の日、わたしはこの件についてじっくりお話しする時間を作りました。あやふやにしているよりは、きっちりお話しをしたほうがいいと思ったからです。きっと幼い息子にはまだ意味が分からないかもしれません。
─昨日さ、先生がお母さんの忘れもののことをキミにお話ししたでしょう?覚えてるかな?
「覚えてるよ。すごく悲しかったよ。」
─そうだね、悲しいよね。お母さんが忘れものばかりしていたら、キミが悲しくなっちゃうよね。お母さんが忘れものばかりして本当にごめんね。
「悲しいよ。ぼくが先生に怒られちゃうんだよ。」
─そうだよね、本当にごめんなさい。あのね、今から大切なお話しをするよ。
─お母さんは、忘れものをしないように頑張ります。でも、これからも忘れものをしてしまうかもしれない。お母さんは覚えておくことがとてもヘタクソだから、きっとこれからも忘れてしまうかもしれない。だからね、キミにお願いがあるんだけど…お母さんのお願いを聞いてくれる?
「うん、聞くよ。」
─朝、保育園に行く前に、持っていくものを一緒に考えてくれるかな?もし、考えることをお母さんが忘れてしまったら、「持っていくものを考えるよ」ってキミが言ってくれたら嬉しいな。
息子はわたしのお願いを聞いてくれました。母親がみずから子どもに情けないお願いをするなんて…と、自分の選択が正しかったのか未だに分かりません。ですが、息子は頼られたことが嬉しかったようで、ちょっと誇らしげに「忘れもの確認」をしてくれます。もちろん毎日できるわけではありませんが、この日以来、忘れものが減ったように思います。
わたしのことですから自覚のない忘れものもあるかもしれませんが、「あ!!あれを忘れた!!」は確実に減りました。
きっとこの先もずっと、何度も、息子はわたしの「ウッカリ」で嫌な思いをすることでしょう。目に見えてハッキリ分かるものではないぶん、余計にモヤモヤすることもあると思います。そういう負の側面をどうやって切り抜けたらいいのか、息子の自尊心をどうやってケアすればいいのか、課題は山積みです。
今回の件も何が正解なのか分かりません。迷いながら手探りで進むしかありませんが、大切なことは「親も子も打たれ強くなること」「長い目で見ること」だと思いました。
ライター:金延さえ
「せいんせいがね、お母さんのこと、忘れものが多いねって。また忘れちゃったね、いつもなんでも忘れるねって。ぼくはさあ、困っちゃったんだよ…」
「ついに、きたか」と思いました。こういう理由で息子が傷つく日がくると、ハッキリ覚悟していたわけではありませんが、なんとなく予想はしていました。
前回記事:ウッカリ者のわたしが、子育てをするうえで気をつけていること。
「息子が自分のことで傷ついている」
思っていた以上にショックで、息子から話を聞いた日はずっと頭の隅っこがグルグルしていました。怒りの矛先は間違いなく自分だけれど、自分のことを棚に上げて息子にそんなことを言った先生にも腹が立ってしまう。
どうして子どもの前で親の短所を挙げるのだろうか。
とはいえ悪いのは、どう考えてもわたしです。先生だって「このお母さんはウッカリさんだ」と分かっていても、度が過ぎてイヤになっちゃうんだろうな。そりゃそうだ。先生がぼやきたくなるのも分かります。
そこで、わたしは考えました。ぱっと頭に浮かんだのは以下の3つです。
1. 先生に息子がしょんぼりしている事実だけを伝える。
2. 先生に普段からわたしが迷惑をかけていることを謝りつつ、息子がしょんぼりしている事実も伝える。
3. 息子がしょんぼりしていること、それを見てわたしも、自責と反省と怒りと悲しさでどうしたらいいのか悩んでいることを、ありのまま伝える。
悩んだ結果、何も伝えないことにしました。
理由はこれから同じことが何度も起きるからです。いまの時点だけを考えれば、先生に気持ちを伝えれば何かいい方向に対処できる可能性もある。先生だって育児のプロとして、自分の発したことばが息子をしょんぼりさせていることを省みるかもしれません。
もちろん、わたしは忘れものをしないように日々の生活を見直す必要があります。失敗するメカニズムを見つけて対処しなければなりません。いくら苦手な分野だからといって、対処無しに開き直るのなんてもってのほか。
とはいえ人生は長いのです。これから先も、息子がわたしの子どもである限り同じことは繰り返しあるはず。そのたびにしょんぼりして、わたしは息子がしょんぼりしないように道を優しく整備して…キリがありません。
それってまるで、「弱者なんです!だから優しく扱ってください!」って叫びながら道を歩くようもの。そんな親子になりたいかな。絶対になりたくない。そもそも、弱者だとは思っていません。
社会の対応も他人の目も、自分に都合よく変わることはない。
息子には大変申し訳ないけれど、不甲斐ないなと思うけれど、本人がこの母親に慣れるしかない。うたれ強くなるしかない。すべてのものには良い面と悪い面があって、それを両方見守れるようになってほしい。ウッカリ者の母でごめんよ息子。でも、どうか強く生きてほしい。
自分の弱さを隠さずに息子に「お願い」
息子がしょんぼりして帰宅した次の日、わたしはこの件についてじっくりお話しする時間を作りました。あやふやにしているよりは、きっちりお話しをしたほうがいいと思ったからです。きっと幼い息子にはまだ意味が分からないかもしれません。
でも、今は分からなくても、あとから思い出してもらえる可能性もあると思いました。
─昨日さ、先生がお母さんの忘れもののことをキミにお話ししたでしょう?覚えてるかな?
「覚えてるよ。すごく悲しかったよ。」
─そうだね、悲しいよね。お母さんが忘れものばかりしていたら、キミが悲しくなっちゃうよね。お母さんが忘れものばかりして本当にごめんね。
「悲しいよ。ぼくが先生に怒られちゃうんだよ。」
─そうだよね、本当にごめんなさい。あのね、今から大切なお話しをするよ。
難しくて分からなくても、頑張って聞いてくれるかな?
─お母さんは、忘れものをしないように頑張ります。でも、これからも忘れものをしてしまうかもしれない。お母さんは覚えておくことがとてもヘタクソだから、きっとこれからも忘れてしまうかもしれない。だからね、キミにお願いがあるんだけど…お母さんのお願いを聞いてくれる?
「うん、聞くよ。」
─朝、保育園に行く前に、持っていくものを一緒に考えてくれるかな?もし、考えることをお母さんが忘れてしまったら、「持っていくものを考えるよ」ってキミが言ってくれたら嬉しいな。
息子のおかげで忘れものが減りました。
息子はわたしのお願いを聞いてくれました。母親がみずから子どもに情けないお願いをするなんて…と、自分の選択が正しかったのか未だに分かりません。ですが、息子は頼られたことが嬉しかったようで、ちょっと誇らしげに「忘れもの確認」をしてくれます。もちろん毎日できるわけではありませんが、この日以来、忘れものが減ったように思います。
わたしのことですから自覚のない忘れものもあるかもしれませんが、「あ!!あれを忘れた!!」は確実に減りました。
きっとこの先もずっと、何度も、息子はわたしの「ウッカリ」で嫌な思いをすることでしょう。目に見えてハッキリ分かるものではないぶん、余計にモヤモヤすることもあると思います。そういう負の側面をどうやって切り抜けたらいいのか、息子の自尊心をどうやってケアすればいいのか、課題は山積みです。
今回の件も何が正解なのか分かりません。迷いながら手探りで進むしかありませんが、大切なことは「親も子も打たれ強くなること」「長い目で見ること」だと思いました。
ライター:金延さえ