お墓を作る必要ナシ! “ゼロ葬”が増えているワケと最新の葬儀事情
こんにちは。エッセイストで経済思想史家の鈴木かつよしです。
今わが国では、葬儀の形やお墓というもののあり方が変わってきています。
何代にもわたって同じ土地に住み続けるわけでもなく、生涯独身で生きてきたためお墓を守ってくれる子どもがいるわけでもなく。非正規雇用で働いているので100万円もするお墓を亡くなった親のために買ってあげる余裕もなく……。
少子高齢化と相対的貧困の増加に伴って、亡くなった人のために家族がお墓を作るということをしない「ゼロ葬」と呼ばれる葬儀のあり方 が急速に広がりつつあります。
今回は最新の葬儀事情をご紹介しながら時代とともに変わる供養の形について考えてみたいと思います。
●ゼロ葬とは何か、どのような種類があるのか
まず、『ゼロ葬』とは何でしょうか。
一般的にその語源は宗教学者の島田裕巳先生が提唱してきた『ゼロ死』すなわち、「死んだら何も残さずゼロになるのがいい 」という概念に由来すると考えられています。
ゼロ死には「死んでも葬式をあげない 」ゼロ葬儀と、「死んでもお墓は作らない 」ゼロ墓の2つの要素がありますが、最近は葬儀やお墓の業界でそれらを包括して『ゼロ葬』と呼んでいるようです。
では、ゼロ葬にはどのような種類があるのでしょうか。ゼロ葬儀とゼロ墓の両面からみてみましょう。
●(1)直葬(「ちょくそう」または「じかそう」)
一般的な火葬式の手順にあるお通夜も葬儀も告別式も省略し、ご遺体を安置した後は火葬場に直行する形式のことです。
関東地方では今や全体の4分の1がこれにあたる と言われています。
●(2)遺骨引き取り拒否
火葬場によっては遺族が遺骨の引き取りを拒否できるところがあります。
その後のお墓等の心配をすることもないため、島田先生は元々はこれを「究極のゼロ葬」としています。
●(3)預骨
通常は火葬場からの引き取りを拒否できない遺骨を、葬儀会社に一時的に預かってもらうサービスのこと。
非正規雇用の増加等に伴い、100万円前後の費用がかかるお墓を購入する経済的余裕のない人が増えているため、数万円の保証金でお墓が用意できるまで遺骨を預かってもらえるこのサービスの利用者は増加しています。しかし、一方で遺骨を預けたまま音信不通になる遺族が急増しており、問題になってもいます。
なお『東京都公園協会』では、都民対象に何か所かの霊園で遺骨一時預かりの制度を設けています。