「厳しい指導」を受けてきた元全日本代表、益子直美さんが「怒らない指導」を始めた理由
ワールドカップと言えば、目下日本で開催中のラグビーにスポットがあたりますが、バレーボールのワールドカップ(W杯)も先日まで日本で開催され、盛り上がりを見せました。日本女子は5位と健闘。男子もロシアを10年ぶりに撃破するなど、メダルには届かなかったものの4位と熱い戦いを繰り広げました。
元全日本選手として活躍した益子直美さんは、バレーボールの育成を真剣に考えるOGのひとりです。毎年1月に福岡県宗像市で自身の名を冠した「益子直美カップ小学生バレーボール大会」が開催され、来年の1月で6回を数えます。
この大会、実はちょっと変わった「決めごと」があるのです。それは、「監督は絶対に怒らない」というもの。
どうしてその「決めごと」を作ったのか伺いました。
(取材・文:島沢優子)
益子直美カップは怒られないので、「いつもより思い切ってプレーできる」という子どもたちの声も
■「ああ、やっぱりね」怒ることが競技上達を阻む理由
「監督は絶対に怒らない」決めごとを遂行するためにどんなふうにしているのでしょうか。
益子さん:選手には、「もし、監督が怒ったら教えてね」と伝えてます。怒った監督は私が叱ります。長くやっているので、怒りそうな方は大体わかっています(笑)。そういったチームが試合をするときはベンチの横に座って、目を光らせています。
とはいえ、すべてのチームを益子さんがチェックできるわけではありません。開催地の福岡以外に山口、佐賀、長崎、大分、熊本、鹿児島からも参戦するので男女合わせて450チーム以上。およそ600人の小学生が参加します。
そこで、子どもたちの自己申告制にしてあるのだそうです。
益子さん:子どもたちに「監督さんが怒鳴ったり、怒ったりしたら、私のところに報告に来なさい」と伝えています。すると、「益子さん、うちの監督が怒った!」とやってくる。そこで、私が監督さんのところに行くと「怒ってませんよ~」とおっしゃる。「でも、子どもたちが怒ったと言ってますよ」と伝えます。「次またやったら出て行ってもらうこともあるし、次の大会は出られませんよ」とそこまで言っちゃいます。
重視するのは勝ち負けではなく「子どもたちが楽しくのびのびとプレーする」こと。それが大会のコンセプトであることを理解し、大会を機会に自分の指導の仕方を見直してほしいという思いもあるためです。
試合の後などにヒアリングすると、益子さんに怒られた指導者は驚いたような顔をするそうです。