「休んだ分を取り戻そう」はNG、Jクラブのドクターが教える長期休暇明けのコンディションを戻すのに必要な時間
サッカーのプレー中にマスクをするのは、現実的ではありません」
熱中症だけでなく、ウイルス対策もしなければいけないので、今年の夏は気をつけるべきことがたくさんあります。飲水にも注意が必要です。いままでのように、スクイーズボトルを使って回し飲みをすることは、ウイルス対策の観点からは避けなくてはいけません。
「ウイルス対策の観点からすると、試合中に誰が口をつけたかわからないボトルを飲むわけにはいかないので、飲水タイムを設けて、各自のボトルから飲むようにすることも検討するべきでしょう」
■成長期だと自粛前と後で身体やボールフィーリングが変わっている子も
学校やスポーツ活動も再開していますが、急に3か月前と同じ強度のトレーニング、試合をするのは避けたほうが良さそうです。
「子どもの場合、基礎的なトレーニングから、試合と同じ強度のトレーニングに移行するのに、6週間ほどかかります。そこから逆算して、試合は何日から開催すると決めた方がいいでしょう。とくに子どもの場合は、慎重に段階を経て強度を上げていくこと。急に強度の高い練習を長時間すると、外傷リスクは確実に上がります」
活動自粛によって失われた時間を焦って取り戻そうとすると、ケガのリスクが上がります。
結果として、長期間サッカーができなくなることになるので、自粛明けの指導者には、トレーニングの時間や強度をコントロールすることが、いつも以上に求められそうです。
「トレーニングをしていない期間が8週間ある場合、もとに戻るのに8週間かかります。それを2、3週間で戻そうとすると、大幅にギャップがあるので、ケガをするのは当たり前です。すぐに戻そうとせず、時間をかけて戻さなければいけません。とくに小学生年代は身長が急激に伸びる時期なので、自粛前と自粛開けとでは身体のサイズ等の状態が違います。それなのに、2ヶ月前の感覚でやろうとすると代償が起こったり、整合性がとれなくなります」
長い休みによって、身長が急激に伸びる子もいます。自粛前と後では、身体やボールフィーリングの感覚が違うことは、頭に入れておいた方が良さそうです。
「極端な例ですが、フィギュアスケートの選手が、14歳のときにトリプルアクセルが跳べたのに、20歳になると同じように跳べなくなることがあります。
それと似たようなことが、長期休暇明けの子どもたちの身体に起こる可能性があるので、とくに注意深く見ることが必要だと思います」