昭和の高圧的な指導から脱却すべき。益子直美さんが「監督が怒ってはいけない」大会を開催する理由
「イトーヨーカドーのバレー部に入って、監督に『益子はどんな選手になりたいの?』と聞かれました。私はそれまで、バレーに対して自分で考えることをしてこなかったので、何も答えられないんです。『監督が決めてください。私にどうなって欲しいですか?』と逆に質問するぐらいで......(苦笑)」
監督から「もっとバレーを楽しんだら?」と言われても、楽しみ方がわからない。そもそもバレーを楽しいと思ったのは、バレーを始めた最初の頃だけ。中高生の頃は良いプレーができると「これで怒られなくて済む」という思いが真っ先に浮かんできたそうです。
「いま振り返ると、ミスを指摘して、人格を攻撃する言葉をかけるのは、指導とは言えませんよね。そうすることで選手はどんどん萎縮して、考える能力を奪われてしまいます。
私が現役の頃はいろいろなことがアバウトな時代でしたけど、いまは指導法もアップデートされて、科学的にもパワハラや暴言が脳に悪影響を及ぼすことが明らかになっています。そろそろ、『アタックNo.1』や『巨人の星』の時代から、脱却しなければいけないと思います」
■イトーヨーカドーの代表にかけられた、忘れられない言葉
益子さんはイトーヨーカドーで7年間プレー。リーグ初優勝を果たし、キャプテンを務めるなど、花形選手として活躍しました。
「イトーヨーカドーには『お客様を大事にする』という理念があって、伊藤(雅俊)代表は、私たちに『大事なのは勝ち負けではありませんからね。お客様からたくさん拍手をいただけるような、良いプレーをたくさんしてください』と言ってくれました。
そう言ってくださるからこそ、勝利ではなく一つひとつのプレーを大切にし、ボールに向かっていくことを心がければいいんだと思うようになりました」
■高圧的な厳しい指導から得た「学び」はない
学生時代を振り返ったとき、「バレーボールを楽しい」と思えなかったことは、いまでもかさぶたのように、心に残っているようです。
「私はバレーをやっていて、楽しいという感覚を知らないまま引退しました。たまに考えることがあります。中学生に戻って楽しくバレーができたら、どんな選手になれたのかなって。あの頃に戻って、やり直してみたいです」
益子さんに限らず、好きで始めたスポーツが嫌いになり、辞めていく人は後を絶ちません。はたして、厳しい指導とはなんでしょうか?楽しくプレーするとはどういうことでしょうか?その厳しさは選手を成長に導くために、本当に必要なものなのでしょうか?
「私は指導者に高圧的な厳しさを与えられ、それを受け続けてきました。