威嚇するS級コーチのもとに卒業までいさせていいのか問題
「S級コーチがそんなことをするなんて信じられません」などとは言いません。どういったプロセスでS級を付与されたのかはわかりませんが、ご自分がプレーをやって見せたり、技術を教えることには長けている方なのかもしれません。
■コーチがしていることは「威嚇」ではなくすでに「暴力」
ただし、お母さんのお話がすべて事実であれば、私の感覚ではこの方は指導者失格だと思います。
「蹴りを寸止めして『びびってんじゃねーよ』など言ったり、ボールを頭めがけて思いっきり蹴ってきたり」
お母さんは「威嚇」と表現していますが、これは間違いなく暴力です。スポーツ界は2013年4月に暴力根絶宣言をしています。このコーチにS級ライセンスを与えた日本サッカー協会も同様に宣言しています。
それなのに、今でも一部の指導者は、手を上げなければ、つまり拳で殴ったり、平手打ちをするなど直接手をくださなければ暴力ではないと考えている方もいます。なかには、「何か言われても、暴力だと思わなかったと言えばいいんだ」とおっしゃる方もいると聞きます。
決して良いことでないとわかっていてやっているわけです。
■暴力暴言は脳を委縮させ、更には生きづらさの原因にも
この暴力について、少しだけ意識を高めて考えてみてもらえないでしょうか。デリケートな子どもの脳は幼少期に厳格な体罰や暴言などを受けることで変形し、発達の遅れや記憶力低下につながってしまう――現在の脳科学ではそんなこともわかっています。
「日常的に親から暴力や暴言を受けて育った子どもの脳は萎縮したり、変形したりして発達が損なわれてしまう。それが原因となり、子どもは将来生きづらさを抱える可能性がある」と、著名な小児精神科医の先生から聞きました。
したがって昨年、厚生労働省は親がしつけと称して体罰をふるうことを禁止しました。親でさえやってはいけないことです。さらにいえば、小学校の先生がこのようなことをやっていたことが発覚すれば、場合によっては懲戒免職です。
なぜ、サッカーのコーチだけが許されてしまうのでしょか。
また、「最初は言葉の暴力だけでしたが、いまはと威嚇がひどくなってきています」とあります。言葉の暴力が具体的にどんなものか書かれていませんが、息子さんに代表の方が言った「お前なんて通用しない」とか、トレセンに推薦したのに「今度は落としてやる」といったものも「暴言」