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「月謝を払っているんだから上手くして」かけたお金=上達ではないのにサッカーでもコスパを求める保護者にどう説明したらいい?

サカイク
「月謝を払っているんだから、ちゃんと上手くしてほしい」という保護者への対応、どうしたらいい?とのご相談。

すぐ習得できる子もいれば、時間がかかる子もいて、一概にこれを教えればいつまでに上手くなるというものでもないのに、かけているお金と成果(上達)が比例しないといって、すぐに上達することを求めてくる保護者達。

じつは、指導者の悩みの中でも多く聞かれる内容です。みなさんならどうしますか?

今回もジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、悩めるコーチにアドバイスを送ります。
(取材・文島沢優子)

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「月謝を払っているんだから上手くして」かけたお金=上達ではないのにサッカーでもコスパを求める保護者にどう説明したらいい?

(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)

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<お父さんコーチからのご質問>

サッカースクールコーチです。
はじめまして。

私が指導しているのは、チームを持たず試合などは行わないサッカースクールです。

当然レベルもバラバラで、「運動体験をさせたくて」と親が連れてきた子や、近隣のチームに所属しつつサッカーの技術を高めたい子、チーム練習がない日の放課後を過ごす場所として通っている子もいます。

教えているU-10年代(小3)は全員で12名です。

悩みは保護者からの要求です。「月謝を払っているんだから、ちゃんと上手くしてほしい」という声を度々いただくのですが、親御さんの気持ちも分かりますが、子どもによっては練習メニューをすぐ習得できる子もいれば、時間がかかる子もいて、一概にこれを教えればいつまでに上手くなるというものでもないですよね。

本人のやる気が大事なので見守ってほしいと思うのですが、かけているお金と成果(上達)をコストパフォーマンスのように捉えている方も少なくありません。

池上さんならどのように保護者に理解してもらいま

<池上さんのアドバイス>

ご相談ありがとうございます。

親御さんから「もっと上手くしてほしい」と言われる。指導者の間でよく聞かれる話です。
サカイクの読者の皆さんはもうご存知かと思いますが、少し以前からサッカーコーチの皆さんは子どもの自主性、主体性を伸ばす指導を目指しています。

■親世代が受けた指導と180度違うので「教えてくれない」と解釈してしまう


ところが、親御さん世代が受けた教育やスポーツ指導とは180度違う性質のものなので、彼らからすると、「コーチは子どもに何も言ってくれない」「ほったらかしで教えてくれない」と解釈してしまうようです。

ここは、指導者自らが親御さんたちに向けて「こんな理由で、こんな方針をたて、このような指導をしている」ときちんと説明しましょう。

■トレーニングがアジャストしていない可能性も


もうひとつのチェック項目は、トレーニングの質です。トレーニングそのものがアジャストしていなくて子どもたちが上達しない、という側面があることも忘れてはいけません。

コーチとして、自らの指導を省みることはなかなか難しいことですが、サッカー経験のない親たちが「上手くなっていない」と言うのであれば、余程のことかもしれません。

例えば、私のトレーニングは毎回メニューが変わります。そのうえ、同じメニューを長々とやりません。
これができたから次に移る、という考え方ではないのです。同じことを長くやってしまうと、子どもは飽きます。短い時間で目先を変えてどんどんやるほうが、子どもたちは楽しくやれます。

■ミニゲームでは練習のテーマを思い出させる声掛けを


ご存知のように、練習は「マッチ‐トレーニング‐マッチ(М・T・М)」といって、最初にミニゲームをして、そこで足らないものを練習し、最後にまたミニゲームをしてその日練習したことにトライしてもらいます。ミニゲームの質が、最初と最後で変わっていることが目に見えてわかる。それが理想です。

例えば、最初のゲームでワンツーをもっと使おうという目標を定めます。それに付随した練習を行った後、最後にミニゲームでワンツーをどんどんやってもらいます。
そうすると、ミニゲームでの勝敗などに懸命になってしまい、どんなテーマでその日練習したのかを子どもたちは忘れがちです。そういうときこそコーチの出番です。

「今日は何を練習したかな?」
「今のところ、サイドでワンツーができたよね」

そんなふうに声掛けをします。できているチームや選手をほめたり、できないときに「どうしたらできるかな?」と尋ね、自分で考えてもらいます。

このあたりは決して親受けを狙うわけではありません。必要な指導を、必要な場面で行う。これが重要です。このようにいつも質問を投げかけながらトレーニングをする方法は、フィードバックと言われています。
この手法は今世界で注目されています。その時その時の状況を認知させることで、自己解決策を見つけさせていく方法です。

そういったことがスムーズに行えるようにするには、まずは自分の指導に問題ないのかを考えてみることが肝要です。

■能力や動機付けがバラバラの子が一緒にやる重要性を保護者に説明しよう


「運動体験をさせたくて」と親が連れてきた子。
近隣のチームに所属しつつサッカーの技術を高めたい子。
チーム練習がない日の放課後を過ごす場所にしている子。

サッカースクールなので、いろいろなレベルがあるのは当然のことです。書いていらっしゃる通りです。
だからこそ、練習も当然いろんなことをやらなくてはいけません。

そのことを理解したうえで、以下の三つのことに目を向けてみましょう。

ひとつめ。

能力や動機付けがバラバラの子が一緒にやる重要性を、親御さんたちに説明しましょう。能力がバラバラだけど仕方なく一緒にやってます、という感覚ではなく、バラバラのほうが子どもたちはひとり一人が上手になるということをまずは相談者自身が理解してください。そのうえで、そのことを保護者に伝えます。その際はきちんと理論武装し、どうすれば保護者を納得させられるかをよく考えて臨みましょう。

それでも親たちが「お金を払ってるんだからもっと上手くして」と言ってくるのであれば、子どもたちをレベル分けして練習させるのか、もう一度練習の方針を説明するのか考えてみましょう。


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■いつも全体で動かす必要はない。習熟度に合わせた練習もできる

「月謝を払っているんだから上手くして」かけたお金=上達ではないのにサッカーでもコスパを求める保護者にどう説明したらいい?

(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)

ふたつめ。

ご相談者様が受け持っている12名という人数は、とてもいい規模感です。全体で練習を動かしながらも、子どもたちの「個別性」を追求できる人数と言えます。例えば、みんなでキック練習をしていれば、うまく蹴られない子には手厚く指導してあげられます。12名のなかには必ずできている子、もしくは早くマスターしてしまう子がいますから、その子のプレーを可視化し真似することでほかの子も上達します。

メニューによっては「君はこういうことやってみよう」「君たちはあっちでこれをやってみよう」と習熟度別にやることもできます。ひとりのコーチでも、12名全員に声をかけることができます。いつも全体で動かす必要はありません。そんな練習のやり方もあるのです。

■ただ漠然と練習しているわけではないことを説明しよう


みっつめ。

練習後の話をぜひ親御さんにも聞いてもらいましょう。どんなテーマでどう取り組んでいたのか。ただ漫然と練習をしているわけでないことを理解してもらいましょう。

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池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。

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