W杯でキャプテンを務めた森岡隆三さんが「サッカー選手になることだけが、目標になってはいけない」と語る理由
そのときの言葉を、いまでも覚えているそうです。
「桐蔭学園に入学した当初、李さんに『高校サッカーの目的はなんだ?』と聞かれました。そこでみんなが『日本一になること』と答えたのですが、『それは違う。高校で日本一になったからといって、一生食べているわけではない。そうじゃなくて、大学や社会人、プロなど次のステージに行くために、準備する期間だろう』と言われました」
その言葉で目から鱗が落ちた森岡さん。アカデミーで自身が接する選手たちにも、そう伝えていると言います。
「清水のアカデミーには『勝ち負け以上の価値の創造』というフィロソフィーがあります。育成で大切なのは『問題から課題をみつけて、克服していく力』です。
保護者の方にアドバイスをするならば、プロになることだけを見据えるのではなく、その子なりのやり方、スピードを理解してあげて、自分の力で課題を克服していくプロセスを踏ませてあげることが大事なのだと思います」
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■現役引退後も成長を続けることの大切さを学んだ
さらに、こう続けます。
「課題を克服する経験を積むことで、次のステージに進み、問題が起きたときに立ち向かうことができたり、道を切り開けるようになるのではないかと思います」
その結果として、目標であるプロサッカー選手になれたのなら素晴らしいことです。森岡さんはプロの先輩として、現役引退後、「成長し続けることの大切さ」を、身をもって体験したと言います。
「清水の監督をしていたオズワルド・アルディレスに聞いたことがあります。『僕より上手な選手がいたのに、なぜ試合で使ってくれたのですか?』と。そうしたら『答えは簡単だ。隆三は成長を続けていたからね』と言ったんです。そのときに、成長を続けることの大切さに、改めて気がつきました」
■親は子どもの背中を押してあげるけど、与えすぎない。バランスが大事
森岡さんは清水エスパルスのアカデミーに携わるようになってからも、選手の成長過程、プロセスに目を向けているそうです。「例えばジュニアユースからユースに上がる選手を選ぶときに、同じぐらいの実力の選手であれば、そこまでのプロセスを見ます。3歩進んで2歩下がろうが、1歩ずつでも成長してきているというプロセスやマインド、メンタリティが大事だと思っているからです」
森岡さんは「困難に当たったとき、克服していくためには"グリッド"と呼ばれる、やり抜く力が大事になるのではないでしょうか」