ドリブルが上手い子に個人プレー制限で得点減少、小学生年代までは個性的でもいいのでは? どんな指導が良いか教えて
そこでオシムさんに「練習の後シュート練習をさせてほしい」と居残り練習を直訴しました。
すると、オシムさんはこう言ったのです。
「心配するな。シュートも全て俺の練習に入っているから」
恐らく巻選手は、ひとりでドリブルで持ち込んでシュートを打つといった練習を考えていたのだと思います。しかし、守備のプレッシャーも何もなくそんな状況でシュートを打つ場面は、ほとんどありません。ヘディングが武器だった彼には特になかったと思います。
それよりも、試合の流れやサッカーの成り立ちを理解して、攻守の切り替えを早くしたりすることが先決でした。
当時、ある試合で巻選手が抜け出してシュートをミスしました。
相手守備にひっかかって大きく跳ねたボールはそのまま相手からのカウンターにつながり、失点したのです。残り時間の少ないことを考えると、慎重にプレーする必要がありました。
オシムさんは「台無しだ。おまえのせいで負けた」と巻選手を責めました。あっという間に逆襲されたその場面は、2018年W杯ロシア大会決勝トーナメント1回戦の日本対ベルギー戦のようでした。
オシムさんはドリブルや細かい技に固執するのではなく、パス出して走ること、もっと言えばダイレクトパスにこだわりました。シンプルにプレーすること。無駄なことをしないこと。
みんなが動かないといけないのだと説きました。
■ドリブルを「チームのためにどう使うか」
(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)
今回のW杯でアルゼンチンはメッシ中心のチームにして優勝しましたね、という声もあります。しかし、彼らの勝利のすべてをうのみにしてはいけません。さらにいえば、育成年代ではそういった指導は避けなければならないと私は思います。
上手い子がボールを持つと、いい場所にいる味方がパスをもらえないことが日本の少年サッカーには多いようです。周りが「パスして」と声を出しても、その子は延々とドリブルしています。それを大人も許してしまいます。
そこで「ドリブルをやめなさい」と命じるのではなく、「君はドリブルで抜いた後、何をしますか?」と問いかけて考えてもらってください。
「そのドリブルは、どうやったらチームのためになるのかな?」
そんな質問です。
引き付けてからフリーの仲間にパスをして、もう一度もらう。
みんなのためにドリブルをどう使うか?
そんな発想になればよいと思います。