英語習得のために重要な「学習者」のあり方に関するインタビュー記事公開
アイデンティティというものは、長い時間をかけてできあがっていき、そして変化していくものです。ですから、学習者が自分の過去を振り返って、その過去をどのように捉えているか、ということが現在のモチベーションに影響し、さらにこの先どうなっていきたいかという将来像も現在のモチベーションに影響します。」と新多教授は言います。
■ 理想的な学習者の姿
同じように第二言語を習得したいと考えている人たちであっても、積極的に学習しようとする人と、そうでない人に分かれます。新多教授によると、その違いは、次の4つの要素をもっているかどうかによって生まれます。
1)エージェンシー : 自分の学びに対して当事者として責任をもつ力。
2)自己調整力 : 計画→観察→自己評価というサイクルでモチベーションや学習を調整する力。
3)相転移:新たなチャレンジをすることによって次のレベルに上がれる力。
4)振り返る力:自分の学習状況を深く分析する力。
■ 理想的な学習者になるために教師ができること
「授業の中で教師ができることは、大きく分けて二つあると思います。一つは、どのようなタスクや課題(※1)を準備するか、ということです。もう一つは、どういう手助けをするか、ということです。これは、scaffolding(スキャフォールディング)と呼ばれていて、日本語では「足場かけ」と訳されます。Scaffoldingは「〜ing」と進行形になっていますが、これはこの概念をぴったり表していると思います。イギリスにいたときに、建物を立てているところをよく見たのですが、そこに組まれていた足場は、毎日そこを通るたびに変わっていました。ビル建設の進行状況に伴って、足場が上や横にずれていったりしていたんです。これがまさにScaffoldingなんです。」
さらに続けて、「授業では、子どもや生徒をよく観察して、いまどういう助けが必要なのかを判断して、適切なチャレンジをできるような状態に環境設定していく、ということですね。
チャレンジというのは、認知的なレベルに合ったものにすることはもちろん大切ですが、モチベーションや自尊心など、非認知的な要素にも配慮したScaffoldingをしていく、ということもすごく大事だと思っています。」と話します。
新多教授によると、「いまは特に変化が激しいVUCA(※2)と呼ばれる時代ですから、何が正解かわからない中で生きていくためには、自分で考える力はすごく大事です。