2022年2月28日 13:00
子どもの脳は周りの環境に適応しながら変化していく脳研究から見えてくるバイリンガル環境づくりのポイント
子どもが幼いころから二つの言語に触れるバイリンガル環境で育つ場合、親にも教育者にもさまざまな疑問が生まれます。一つの言語のみで育つ場合と、二つの言語で育つ場合では、脳やことばの発達がどのように違うのでしょうか。また、言語を身につける能力には、どのような脳の仕組みが影響するのでしょうか。ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所(※以下、IBS)では、脳の研究をご専門とする東京大学の池谷 裕二教授にお話を伺い、神経回路、言語発達、親の関わり方、といったさまざまな側面から、子どもにとってより良いバイリンガル教育についてお話を伺い、公式サイトにて記事を公開しました。
池谷 裕二 教授
●生まれたばかりの子どもはすべての言語の音に対して反応するが、生後2年間とそれ以降では、日常的に耳にしない言語の音を聞き分ける能力に大きな差がある。
●子どもが二つの言語に触れる環境で育つことは、脳の発達にとって負担にはならない。
●バイリンガルの子どもに見られる「語彙」学習の遅れはバイリンガル特有の発達過程であり、劣等感を抱く必要はない。
●親にとっても子どもにとっても良いバイリンガル環境づくりとは、親ができること、できないことをしっかり見極めること。
脳に関する研究の中で、神経生理学がご専門の池谷教授。特に学習や記憶の分野を研究されていらっしゃいますが、「どうして英語を話せる人と話せない人の差はこんなにも大きいのだろう」と疑問に思ったことがきっかけで、英語教育やバイリンガル教育に興味をもったといいます。乳幼児期から二つの言語に触れて育った子どもは、自然と両方の言語を身につけていきますが、バイリンガルの脳は、どのように働いているのか、池谷教授にお話を伺いました。
■ 生まれたばかりの赤ちゃんはすべての言語のすべての音韻に対して反応する
「バイリンガルの脳をMRIで調べると、例えば、英語を使っているときとスペイン語を使っているときは、違う脳領域を使っています。昔から、バイリンガルの脳に損傷が生じたときは、片方の言語だけ能力が低くなるという研究結果があり、二つの言語はそれぞれ独立した脳回路で獲得されている、ということが言われています。
また、「生まれたばかりの子どもは、発語や耳の反応を調べてみると、だいたい、すべての言語のすべての音韻に対して反応します。赤ちゃんは、そのようなポテンシャルをもっているんですよね。