2022年6月6日 18:10
「そうくるか」の連続!? 型破りな誘拐劇を描く『午前0時の身代金』
「実はプロットは割と早くできたものの、書く段になって、私自身が法律知識ゼロなことに気づいて(笑)」
一念発起し、早稲田大学の法律講座を聴講。執筆に活かした努力家だ。
「ITの知識も、一から勉強した身。専門知識にさほど詳しくない人間と同じ目線に立って書いた方が読者にもわかりやすいだろうと思い、生まれたのが大樹です」
早々に誘拐犯の目星はつく。だがその情報を、職業上の守秘義務があるため、大樹は警察に漏らせない。
「そういうジレンマに葛藤する場面はそれ以外にもかなり盛り込みました。土壇場の踏み絵で何を選ぶか、どう行動するか。そういうシーンこそ、登場人物の人間性が書けると思っているところがあるんです」
犯人は誰か。
身代金は集まるのか。もっとも、それはこのジェットコースター的ストーリーの入り口だ。この先に待つのは、既存のミステリーでは見たことのない展開。「そうくるか」の連続で、読んで損なし。
きょうばし・しおり1972年、徳島県生まれ。第39回創作ラジオドラマ大賞入賞。脚本家として活動したのち、スイスに転居。小説を書き始めて8年目、本作で新潮ミステリー大賞に輝く。
『午前0時の身代金』青くさい正義感を持つ主人公の大樹。