消費者物価指数は上昇するも、中小企業は賃上げ難航…事態改善のヒントは地方に?
西粟倉村は人口約1400人。平成の大合併のときに合併を選ばなかったので、当時は村は衰退するだろうと思われていました。あるのは森のみで、村に産業がなかったからです。ところがこの10年ほどで、課税所得が16.7%上昇、納税者数が7%増加、課税所得平均は9%増となりました。人口が減っても納税者数が増えた理由は、新たな産業を作り新しい雇用を生み出したからです。村では「百年の森林(もり)構想」を策定し、デジタルによって森を管理し、木材の状態ごとにランクづけすることで、効率よく売れるようになりました。また、森で捕獲した鹿やイノシシの肉をジビエに。加工作業は、村の人々が本業の隙間時間に働ける仕組みを作りました。
他にも、他県の養殖場から成長の遅かった鰻を仕入れて丁寧に育て直し、「森のうなぎ」としてブランド化。これらはふるさと納税の返礼品にしています。小さな村だからこそ、一人一人の特性も活かし、小回りの利くイノベーションが起こせました。大きくなりすぎた町を分解し再配置することで、個々の所得を増やす道を見出すことができるかもしれません。
ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」