「夏なのに勤労で日々が溶けていく…」 名フレーズにも注目のコミック『四十九日のお終いに』
それでもこの出会いの特別感はうらやましいなと。自分の憧れを描いた感じです」
表題作は、石川青年が父の葬儀で幼なじみと再会したことからストーリーが動いていく。父権的な父親が亡くなり、母親の口からこぼれたひと言に傷ついた石川。家族の難しさと無二の友情の描き方が繊細で、読者を揺さぶる。
「彼らは20年来の幼なじみで、疎遠だった時期もあります。だけど、ここからここまでが友情というように、パチンとスイッチが切り替わるわけではないんじゃないかと。長く一緒にいるからこそグラデーションな関係性を振り返ることができる。それこそが、かけがえのないものかも」
なんといっても感服するのは、田沼さんの抜群のネームセンスだ。
〈夏なのに勤労で日々が溶けていく…〉〈行動こそが人生をつくるとだけ言っておきますよ〉等々、ハッとさせられる名フレーズが随所に。
「作品に取り掛かる前に、ヒントを求めてスマホのメモをスクロールしつつ眺めたりすることもあるのですが、実際はほとんど使えないですね。でも『こんなことを考えていたのか』という発見もあって、それが取っ掛かりになったり」
商業誌掲載されたのはデジタル作品だが、同人誌時代のアナログの雰囲気を踏襲しているそう。