夫を射殺された“雌のゴリラ”が裁判を起こす!? 斬新な設定も話題の『ゴリラ裁判の日』
それで、すっと話の流れができました」
移住前のカメルーンのジャングルでのローズの生活や、彼女が言語を獲得したことで、死の概念などを理解していく過程も丁寧に描かれる。
「ゴリラを擬人化しただけの話にならないよう、ちゃんと地に足の着いたキャラクターにしたかった。人間でも、海外の言葉を学ぶとその言語の文化が自分の中に入ってくる。ゴリラでもそれは起きると考えました。野生のゴリラが実際何を考えているかはわかりませんが、ゴリラはもともとすごく優しくて繊細で、戦いを避ける性格なので、そういうところを反映させていきました」
そんなローズがアメリカに来て搾取される様子からは、現代の人間社会のひずみが浮かび上がる。圧巻は終盤の2回目の裁判シーン。
「ここはクライマックスになるだろうと思っていました。2回目の裁判の論旨は、今回僕が一番書きたかったものです」
こういう考え方があったのか、と誰もが膝を打つはず。
まさに“人間”を書いた作品となった。
須藤古都離『ゴリラ裁判の日』人の言葉を理解できるニシローランドゴリラのローズ。動物園で人間の子供を助けるために夫が射殺され、彼女は裁判で闘いを挑むのだが…。