微笑ましいエピソードも満載! 心温まるファミリーヒストリー『てつおとよしえ』
自分のことよりも家族に献身する〈よしえ〉は、典型的な昭和の母、というイメージ。
「将来を考えなさいという母の心配が、10代のころはイヤでしかたなかったんです。大人になったいまはわかりますが。とはいえ、母の言うことを全部受け止めるのもしんどいので、そこは父のように受け流す合気道的な知恵が母のいちばんの対処法なんだなと。父から学びました」
そんな母は、実は山本さんのいちばんの応援団かもしれない。
「連載していた文芸誌を毎月買って、チェックしてました。『こんなこと描いて恥ずかしいでしょ』と言いながら、『お父さんがこの前こんなことしたのよ』と結構ネタを提供してくれましたね。マンガにしても面白くない話が多かったですが…(笑)」
家事を全部ひとりで担っていた母。
気になった新製品なら、値段は二の次で買ってしまう父。
「いまだったら、ツイッターに上げた途端に炎上しそうです(笑)。でもそういういくつものバランスで、うちの家族はできていたのだなとあらためて思いますね」
山本さほ『てつおとよしえ』自伝的作品『岡崎に捧ぐ』では描ききれなかった著者の家族にフォーカスした、ファミリーヒストリー。極端なところもあるけれど、すべては愛情の裏返し。