自分らしくいられる居場所はどこに? 思春期の少女の葛藤と成長を綴った連作短編集
依子がそのハードルをどう乗り越えるかは、書きたかったことのひとつです」
少女たちにある化学変化を起こさせる、心揺さぶられるシーンがある。教育実習生・宇手先生の実習最終日、クラスでボイコット計画が持ち上がる。だが、予想外にも、彼は授業ではなく挨拶と称したスピーチを始める。そこには、〈孤独のおかげで出会えたものがたくさんある〉〈自分だけの孤独を大切に〉など、読者の心にも深く刺さる名フレーズがちりばめられている。
「物語に登場するおよそ唯一の大人がこの子たちに掛ける言葉として何がふさわしいだろうと考えていった結果、自然と出てきた気がします」
これまでの作品では「閉塞感のリアリティがすごい」という感想をもらうことが多かったそうだ。
「私自身は『閉塞感を書いたるで』みたいな感じには思っていないんですが(笑)、現実世界で確かにちょっとブレーキをかけながら生活している感覚はあります。その分、小説ではアクセルを踏んで打ち破ってみようという瞬間を書こうとしていますね。それが、悶々としている人たちに届いたのかもしれません」
こざわたまこ作家。
1986年、福島県生まれ。2012年に「僕の災い」で「女による女のためのR‐18文学賞」