坂口涼太郎、木ノ下歌舞伎『勧進帳』に出合い「自分の表現したいものが明確になった」
暴力に代わる一番の人間の武器は、理性や知性だと思っています。実際にはすごく難しいことだけれど、理想が描かれているからこそ、いつの時代にも誰の心にも響く。その理想の世界を叶えるには知性が必要で、その学校では教えてくれない部分を教えてくれるのが劇場だと思うから、僕は生きている限りやり続けたいなと」
この作品に出合う前と後で、俳優としての意識が大きく変わったとも。
「自分のやりたいこと、表現したいものが明確になりました。役を通すことで、自分とは違う環境や境遇で生きている人たちの気持ちが身に染みることがあって。僕は、毎日を必死に生きる市井の人が、日々慰められたり元気になれるような作品がやりたいんだと自覚できた。そんな作品に出合えたうえに、たくさんの方たちに喜んでもらえているなんて、嬉しいし幸せですよね」
映画『ちはやふる』や連続テレビ小説『らんまん』などの個性的な役柄で存在感を発揮している坂口さん。
「誰しも、こんな自分でいいのか、こんな感情になっていいのかと悩んだ経験があると思います。
それを肯定してくれるのが、エンターテインメントの役割なんじゃないのかな」
木ノ下歌舞伎『勧進帳』兄・源頼朝から追われる源義経とその一行は、奥州に落ち延びる途中、安宅の関に差し掛かる。