平安時代にタイムスリップ、男女逆転ラブコメ展開に!? 小ネタにも注目の『平家物語夜異聞』
血を分けた者同士が疑心暗鬼になり家が途絶えるのは、平家とはあまりに対照的。史実をなぞりつつ、血のつながりだけが幸せではないと伝えたかったし、夜くんのような他人が平家の人と心を通わせ家族のようになっていく新しい家族像も描けたらいいなと思いました」
終盤、本書を「異聞」とするにふさわしい仕掛けが用意されている。とりわけ、平家滅亡のその先と沙羅の成長はうれしいサプライズだ。
「いまは変わりましたが、私も20代頃は良妻賢母的な生き方こそ女の幸せだと思い込んでいて、そのくせそれが息苦しかったんです。なので本作でも、夜くんが沙羅ちゃんを“幸せにしてあげる”ような形にはしたくなかった。沙羅の決断を見届けてほしいです」
登場するあまたの平安貴族と武士たちのモダンミックスなファッションも注目ポイントだ。沙羅が馬の代わりにバイクを乗り回したり、BL要素が織り込まれていたり、エンターテインメント性はバッチリ。
「宝塚の舞台では、平安時代の人が膝丈のレザーのブーツを履いて出てきたりしますし、マンガ的なセンスと歴史をミックスさせた舞台も多い、劇団新感線の影響も受けているかもしれません」
黒崎冬子『平家物語夜異聞(へいけものがたりよるくんのはなし)