時代に翻弄される、プログラミングの秀才少年2人の物語『ラウリ・クースクを探して』
「彼は何者でもない。誰もが勇敢に一貫した意見を言えるわけでもなく、誰もが正義や答えを出せるわけでもない。簡単な答えなどどこにもない。それでも人間は生きていける。そんな思いを込めました」
本作はエストニア、コンピューターの近現代史としても味わい深い。
「実はこの話の出発点はMSXです。私も小学生の頃使っていました。旧ソ連は輸出規制によって高精度のコンピューターを輸入できず、日本で作られた8ビットの低スペックのMSXを教育用に導入したのです」
エストニアは現在IT先進国としても有名で、その様子も描かれる。
「コンピューターとは人類にとって何なのかという問いを含ませました。現在のエストニアの姿は、未来の私たちの姿かもしれません」
ところで、作中ラウリが同級生たちのために教本を作る場面が印象的。
「私もアメリカの小学校に通っていた頃、授業で周りが分数の概念を理解できずにいたので、『ユウスケの分数の本』を作ったことがあります。好評で学校の図書館に一部寄贈されました。それが私の一つの成功体験になっています(笑)」
『ラウリ・クースクを探して』幼少期にプログラミングの才能を開花させたものの、歴史に翻弄され、現在消息不明のラウリ・クースク。