触感や匂いまで感じるタッチの美しさ…江戸の職人を描く『神田ごくら町職人ばなし』
杉浦日向子さんの『百日紅(さるすべり)』やNHKの『眩(くらら)~北斎の娘』にでてくるお栄を見て、着るものもかまわず仕事に没頭する女性が出てくる時代劇があってもよいのかもしれないと思いました」
まず、カバー絵をじっくりご覧あれ。その一枚だけでうっとりだが、ぺージを開くたびに、タッチの美しさに見入ってしまう。
「たとえば、風雨や日光にさらされた柱の木目、い草を隙間なく組んだ新品で真っ青の畳表など、それらをマクロレンズレベルで描くことによって、その後カメラを引いてもなんとなく触感や匂いなどがその世界に充満しているように読者は感じるのではないか。そういったマテリアル表現が、こうした世界観への没頭を手助けしてくれると考え、意識しています。なので、そういう雰囲気を表現するためであれば、道具はアナログでもデジタルでも何でも使いたいと考えています」
本作は「トーチweb」で連載中。今後はどんな職人さんたちが登場?
「都市部だけではなく、地方にも原材料になる木を育てたり鉄をつくったり、自然界と人間社会をつなげる大切な役割を担っている職人さんがいると思っています。〈神田ごくら町〉というタイトルではありますが、ときどき江戸の外に出て、そういった職人さんたちにもクローズアップしていきたいですね」