“勤め人あるある”が満載!? 一介の社員が味わう悲喜こもごもを描く“勤め人小説”
で、本書の裏テーマでもある。勇吉は、学生時代から続けている4人編成のロックバンドがあり、かなりよいワークライフバランスを続けてきたのに、それすら脅かされるに至り、あらためて、働くこと、生きることの意味を問い直していく。
「作家として15年目になるのですが、これまで書いてきた主人公たちってほとんどがダメ社員。でも自分の周囲を見ても、勇吉と同じ世代の30代半ばってすごく優秀な人が多い印象なんです。デジタルネイティブでコミュ力も高くて。ただ、できるからこそ、そこに居続ける意味が見えなくなるかもしれない。逆に勇吉は、とんでもない事態に巻き込まれたから考えるきっかけになったのかなと。どこに着地させようかはほとんど考えていなかったので、僕自身が成り行きを見守っていました(笑)」
勇吉をサポートしてくれるチームの存在も、本書のいいスパイス。
「本作はお仕事小説ではなくて、あえて〈勤め人小説〉と名付けたいです。読んでいただき、タイトルに首肯してもらえたらうれしいですね」
『仕事のためには生きてない』勇吉のチームメイトは、再雇用枠の60代・沼尻、出世街道を走る同期のヤマキョー、20代の有能な部下・都築と相良などみな個性派揃い。