被害者と加害者が共同生活!? 深遠なテーマを内包した意欲作『ノラの家』
「誰が何をやったのかの秘密を、だいたい1巻につきひとりくらいずつ明かしていく予定です。実斗は、周囲に愛されて何の不自由もなく生きてきた分、甘ったれだろうし心も弱っていると思いますが、彼が恵まれた環境の中で育ててきた優しさとかポテンシャルが、誰かを救うこともあるかも…と期待しています。私自身の過去を振り返って、自分がこうできたらよかったなと思うことを、実斗にしてもらっているというか。あと、この作品は登場人物が多いので、パッと見の造形をなるべく変えるなどの工夫はもちろん、しぐさのクセやポーズもその人らしさが出るように意識していますね。部屋の中の生活感にも“その人”が出ると思うので、背景でも“人”を描くことができたらいいなと思っています」
実斗は亡父が遺した「人との縁を大切にするんだよ」という言葉とどう向き合っていくのか。これが本作の底に流れる大きなテーマだ。「私自身が父に言われた言葉なんですね。孤独や絶望に囚われてしまいそうなとき、ひとりではないと思えることの安心感があったら、自棄にならないでいられるかもしれません。
簡単には答えが出ない重い問いだからこそ、考えるきっかけにしてもらえたらうれしいです」