辻村深月「言葉の選び方は大人向けのエッセイ以上に時間をかけました」 子どもと本音で向き合ったエッセイ集
そしてある程度記事が溜まってきて、これは同調圧力に屈しないことについての連載だったのだと、しみじみ思いました」
たとえば、遠足のお弁当の時間、よく知らない子の陰口が始まって、「そうなんだ」と相づちを打ったエピソード。大人の世界でもよくあるシチュエーションといえるが、一緒にいた女の子のとった行動に小学生の辻村さんはハッとさせられる。
「周りに流されず、思ったことはどんどん出したほうがいいとか、大人の思う正しさで語られることが多いけれど、表明することだけが向き合い方ではないと思うんです。子どもに伝えようと思うと表現はよりストレートになるのですが、だからこそ言葉の選び方は大人向けのエッセイ以上に時間をかけました」
迷いが生じたときに本を開きたくなるような、辻村さんが子どもというひとりの人間と真摯に向き合った優しい言葉がちりばめられている。
「作家としていろんな方の言葉や文章に触れる機会が増えてくると、本音で書いてあるものに勝る強さはないと感じます。そのことが、全体を通して伝わったら嬉しいですね」
『あなたの言葉を』学校生活、出会いと別れ、読むこと、書くこと。かつての子どもたちにも響くエッセイ集。