青羽悠「主人公は僕がなりたかった人物像」 学生時代のきらめきと痛みと成長を追体験できる『22歳の扉』
印象的に響くのは、夷川の言う「場所は人を救える」という言葉だ。
「学生時代、僕は学校外のバーでアルバイトしていたんです。いろんな人が集まって、みんなが同じ話題で盛り上がることもあるし、一人でいても周囲と断絶している感じではなくて。みんなが緩やかに繋がっている“場所”というもののポジティブな空気を感じていたんです」
そんな中、朔が心惹かれるのが野宮という女の子で、好きだからこそ相手の言動にいちいち反応する朔のヒリヒリした気持ちと、彼の目を通すとミステリアスに見えるけれど実は人間くさい野宮さんの描き方が瑞々しい。
大学といえば必ずやってくるのが卒業の時。朔も仲間たちもみな、やがて自分の進路と向き合わねばならなくなる。
「前半はいろんな人に出会って揉まれる話で、後半はテーマが決断とか決意になっていく。妥協を含んだ選択の中にどう夢や憧れを残すのか、大学生のあの時期の決意の感覚を詰め込みました」
学生時代のきらめきと痛みと成長を、たっぷり追体験できる小説だ。
『22歳の扉』大学一回生の田辺朔の日常は、夷川という先輩に連れ回されるようになって一変。しかも彼から、学内のバーのマスターの仕事を任されて…。