不思議を語るにはぴったりな場所“古都鎌倉”で繰り広げられる“猫”にまつわる怪異譚
「例えば鎌倉って夜にフクロウがよく鳴いているのですが、フクロウの鳴き声を認識していないと鳴いていることにも気づけないんですよね。そうやって多くの人は気づかないけど、実はいろんなことが起きているのだろうし、同じ現象を不思議な出来事と捉える人もいれば、全然別の捉え方をする人もいるかもしれない。そんな気持ちで描いています」
人間は得体の知れないものへの恐怖心が本能的にあるからこそ、化け猫のような存在を作り出すことで、腹落ちさせたかったのではないか。語られるエピソードからは、人々が不思議な現象とどう付き合ってきて、それが現代にどう息づいているのかが浮かび上がってくる。そして古都鎌倉は、そんな不思議を語るにはぴったりな場所のように思えてくる。
「私は得体の知れない状態が好きなので、できるだけ形を与えず、わからないまま描くのが理想だったりします。鎌倉は狭い範囲にいろんなものが詰め込まれている、ごった煮のような場所。全然関係のなさそうなものが隣に存在している面白さと豊かさがあるので、そういう世界を描ければいいなと思っています」
ガクトとマヤは、本当に猫なのか。
そして有紗はなぜここにいるのか。怖さと心地よさが溶け合う、不思議の世界に身を委ねてみよう。