アニメ『怪獣8号』監督「原作の魅力を再現しつつ、アニメならではの見せ方で面白くしていくのが我々の仕事」
しかも、西尾さんが総作監修正を入れたところはイキイキとしているんです。例えば、カフカがあくびをする場面で途中で首を傾けたり、二重あごになってたりするんですが、偶然性が入り込む余地がないアニメの中に、リアルな人のたたずまいをきちんと落とし込んでくださるので、見る度に感動しています」
リアルな人間の物語を構築する上で、声優陣の演技も重要に。
「カフカの『今度はぜってー諦めねぇ!!』といった台詞など、彼らの心の叫びに視聴者が共感するためには、全部が全部デフォルメされたお芝居ではダメで。怒っているときに怒鳴った芝居では、そこに画がついたときに過剰すぎてしまい、一気に対岸の火事のような感覚になってしまう。見る者が入り込むためには、喜怒哀楽の“間”ぐらいの感情を追えていることが大事で、こだわった部分ですね」
本作においては人間をおびやかす怪獣の存在も欠かせない要素。
「前田真宏さんが描いた怪獣は本当に茫洋としていて。例えば、怪獣の真ん丸の目を見ると、この生物とは絶対にわかり合えないと感じる。地震や台風などの自然災害だって、いつどこに、どの規模で起こるかわからないから怖い。
そうした得体の知れない恐怖が前田さんの作るものにはあるんです」