映画のカメラワークを思わせる洗練されたコマにも注目! 大横山飴『花の在りか』
地方の町に戻ってきて再会した小説家志望の三ツ郎と、彼の初恋の相手・真帆。町の映画館や喫茶店、小学校への通学路…ふたりの不思議な距離感を見守りたくなる大横山飴さんの『花の在りか』。
新鋭による、青春グラフィティ。静謐で詩情あふれる映画を思わせる。
「僕にも好きだった人や身近に感じていた塾の先生がいて、もう会うこともないけれど、もっと話したかったなとか、仲良くしたかったなと思い浮かべる人たちがいます。特定のモデルがいるわけではないのですが、思い出深い人たちといま再会したら何をしゃべるだろうかとか、どんな悩みを持っているのかな、という妄想をとっかかりに、登場人物や物語を考えていきました」
彼らのセリフは切り詰められ、映画のカメラワークを思わせる洗練されたコマが静かに進行する。
「マンガだと心の内の言葉を語らせることもできるのですが、彼らの内心を確定できなかった。わからないならいっそのこと何も語らせない方がいいと思ったんです。
言葉にならない感情を描く方法として、言葉は使わず、表情で語るのはむしろよかったかなと。笑いや怒りなど、わかりやすい顔もとらせなかった気がします。お腹が痛いときに我慢して無表情になってしまうのと同じで、日々何かに耐えるような気持ちでいる人も多いのではないかと思います。