現存する最大のモザイク壁画も! モザイク画における日本のパイオニア・板谷梅樹の回顧展
もうひとつの注目ポイントが、旧日本劇場1階玄関ホールの壁画を紹介するコーナーだ。この壁画は古代ギリシャに着想を得た洋画家・川島理一郎が下絵を手掛けたコラボ作品で、梅樹は白磁や青磁など父・波山の陶器をアクセントに様々な素材を組み合わせて作成した。昭和8年の発表当時、大変な話題となり、この作品で梅樹はモザイク画家として一躍有名に。会場では幻の出世作をパネル展示と記録映像にて詳しく紹介している。
巡回する本展の中でも、東京展の大きな特徴は、第3章で波山の陶芸作品も紹介していること。“カラリスト”と呼ばれるほど彩色に秀でた波山の作品は端正で格調高く、本展では重要文化財《葆光彩磁珍果文(ほこうさいじちんかもん)花瓶》の他、波山が手掛けた茶道具も公開。板谷ファミリーの作品を並べることによって、親から子に受け継がれる美のスピリットを解き明かす趣向となっている。
グラフィカルで、どこか現代的。
令和の現在に見ても色褪せることのない梅樹の作品は今、人気が再び高まっている。本展を見れば、その理由を誰もが納得できるはずだ。
板谷梅樹《きりん》昭和30年代 個人蔵
板谷梅樹《花》昭和30年代 個人蔵
板谷梅樹《笛を吹く人》昭和初期 個人蔵
板谷梅樹《三井用水取入所風景》昭和29(1954)