映画『シサㇺ』 寛一郎「アイヌ文化や争う虚しさを映画で伝えられたら」
演じるにあたり、当時の世相や文化などを学び撮影に臨んだ。
「時代の空気を知らないと、その人間としてどう立てばいいかわからないんです。今回の役に関しても、孝二郎が存在している座標がどこにあるのか…彼の立場において何が良くて何が悪いのか知っておかないと、目の前で起きることに対して相対的に見られない。たとえば彼の立場として上役に逆らうということがどういうことなのかとか、今の感覚ではわからないですし。そこの価値観を一致させながら、感情や感覚みたいなものを自分と重ねていきました」
ゆっくりと自分の中にある答えを探すように、作品や役について語る寛一郎さん。その様子からどれだけ真摯に取り組んでいるかが伝わる。
「『1984』というSF小説の中で、この世の中には解決というものはなく決着と言うのが適切で、その決着をつけてきたのは暴力である、という描写があるんです。戦争がなくならない理由はそこだと思うんですけれど、作者は言葉という人間最大の文化を使ってその虚しさを後世に残していくと語っていて、すごく素敵な考え方だと思います。
僕はこの映画がアイヌ文化や歴史を知るきっかけになればとも。それを作品として未来の人たちに残せることが嬉しいし、それが映画のよさのひとつだと思っています」