(Photo by Howard Walfish)
フランスには、少し変わった芸術家がいる。
彼の作品は絵画でも彫刻でもない。
人々の“心臓”を材料にして、彼のアートは作られるのだ。
2万人の心臓を集めた男
(Photo by Karl Steel)
黙々と作品作りに打ち込む……一般的にアーティストに対して持つ印象はそのようなものだろう。
しかし、フランスの芸術家、クリスチャン・ボルタンスキーはひたすら「他者の命」に着目し、長い年月をかけて風変わりなインスタレーションを作り上げた。
2005年より彼が集め始めたのは、なんと人々の心臓音。
世界各地、9カ国以上で人々に声を掛け、現在およそ2万人分の心臓の音が彼の【作品】の一部となっている。
氏いはく、作品作りのきっかけはこうだ。
「好きな人の写真をアルバムにして見る代わりに、心臓音を聞いたらどうだろうと思ってプロジェクトを始めたんだ」
ユダヤ系フランス人の父親の死を経験したボルタンスキーの作品には、ホロコーストや人の生死、記憶、戦争を連想させるものが数多く存在する。