心臓音コレクションも、その一つと言えるだろう。
かつて生きていた人物、今もどこかで生きている人物の命の音を聞くことによって、命の繋がりを想起せずにはいられない。
東京から約5時間。離島の上の心臓音美術館
(Photo by 久家靖秀)
東京から飛行機と船を乗り継ぎおよそ5時間。
瀬戸内海の豊島に、クリスチャン・ボルタンスキーの小さな美術館が存在する。
その名も「心臓音のアーカイブ」。
この平屋作りの小さな建物の中には絵画も彫刻も飾られていないため、「美術館」と称するのは語弊があるかもしれない。
その名の通り、彼が世界各地から収集した心臓音の“保管庫”なのである。
訪れた人は登録料を払えば自分の心臓音を作品の一部としてレコーディングすることができる。
つまりこれは、現在進行形で作成中のアートなのだ。
施設の中に入り、扉を一枚開けると真っ暗な空間が広がる。
誰かの心臓音がランダムに再生され、部屋中に大音響で鳴り響く。
速い鼓動、不規則なリズムを刻む鼓動、今にも止まってしまいそうな鼓動など、心臓の音にも個性があると分かる。