日本とルーマニアという“鎖国”をしていた国をルーツに持つ彼女が、「日本の多様性」について考えたこと
日本だから起こってしまっている問題なのに、その問題を見ようとしなかったり、自分のこととして考えられなかったりするだけなんだと思うんですよね。それをどうやって考えてもらえるように伝えるかを日々作品を作りながら考えています
彼女にとって美術は、言葉で説明できない感覚や思いのはけ口としても機能している。それを含めた自身のテーマに興味を持ってもらえるよう、幾重にも工夫を重ねた作品を使い、当事者ではない人たちが気づいていないところまで思いを馳せられるようなきっかけを作ろうとしているのだ。たとえば『明滅する輪郭』と名付けた作品では、空気はどこでもつながっていて、他人が吐いた空気を自分が吸い込むことで「相手の成分」が自分の一部になる可能性があり、相手にとっても同様だということを表現した。自分と相手の“境界線”は曖昧で、自分は当事者ではないと思える事柄だって実際に関係ないとは限らないと暗示しているようだ。
“明滅する輪郭” / “Outline to flicker”(2015)ビニール袋を人の顔に縫い付けることで「呼吸」を可視化させている
“異なる価値観”に触れないと気づけない問題
安奈さんに、日本の「多様性に対する認識の欠如」