監督、そしてジュリアンの期待に応え、アネットは2人の子供を持つレズビアンのカップルの大黒柱を堂々と演じ、どんな家族にも起こりうる問題を抱えながらも、家族を守ろうとする母ライオンのような強さと、愛する者を失いそうになる現実に怯える繊細な女性の両面を表現しました。特に後半の演技は、恐ろしいほどの迫力に満ちていて、ちょっとゾッとしたほど。そして、見事に4度目のアカデミー賞ノミネートとなりました。
ゴールデン・グローブ賞では、アネット、ジュリアンともに主演女優賞候補になりましたが、アカデミー賞ではアネットのみが候補に。それでもジュリアンはアネットを誘ったことを後悔などせず、アネットのノミネートを心から喜んでいるのでは、と勝手に思っています。ノミネートの常連ではあるものの、未だ無冠のアネットが受賞したら、やはり無冠のジュリアンとどのように喜びを分かち合うのかも見ものでしょう。
一方、彼女の強力なライバルとなるのが、ナタリー・ポートマン。『ブラック・スワン』でバレエダンサー役に挑んだ彼女。
「白鳥の湖」で、白鳥役と黒鳥役を演じわける難しさを体現しました。少女のような純真さを残した女性が、孤独な闘い、表現の可能性への挑戦に明け暮れる中で、あせり、ライバルへの憧れと嫉妬、芸術への献身によって我を失っていく様を、壮絶な心理劇として極限のレベルで表現しています。