【シネマモード】初めて見るイラン 『チキンとプラム あるバイオリン弾き、最後の夢』
舞台となっているのは、1958年の秋、テヘランの街角。クラシカルなファションに身を包んだ主人公たちは、主にヨーロッパの香りを感じさせています。実はこれはイラン映画ではなく、ヨーロッパ映画。原作者で、本作の監督も共同で務めたマルジャン・サトラピは1969年、イランのラシュト生まれ。14歳のときに亡命し、ウィーン、ストラスブールを経て現在はパリ在住と聞けば納得がいくでしょうか。
ただ、舞台がイランと聞けば、イメージするファッションは、女性たちがスカーフとマントウという丈の長いトップスを着ている姿。ただし、それは現在のこと。作品に描かれている時代には、もっとファッションは欧米の影響が色濃く、70年代にはタンクトップやミニスカートに身を包み、長い髪を好きなようにアレンジした女性たちの姿も記録されているのです。
現在のイランは、1979年から続くイスラム共和制。イスラム教の最高指導者が最高権力を握っているので、女性は肌や髪を露出することが許されません。ここ数年は徐々にお化粧や服の色が派手になりファッションの自由化を望む声は大きくなってきたものの、髪や肌を人目に晒さないという基本はそのまま。